27 それより太かった(愚か娘)

 むかしあるところに、夫婦ものが住んでいました。子ども五・六人おり、安泰に暮しておりました。がただ一つ心配なことがありました。それは一番大きい娘が少し利巧の足りないことでした。器量も人並すぐれ、大そうまじめに家の手伝いもしますが、どうも少し利巧が足りないのです。
 今は年頃です。鬼も十八、番茶も出ばなと言います。況して器量よしですからときどきお仲人さんも来ます。はじめとんとん拍子に話が進みますが、定まりかけると、
「占ってもらったら、相性がわるいというもんだから」とか「ワカさ行ったら、方角が悪いっていうので」とことわられることも度々です。親たちも心配して知り合いに頼んだり娘の一代神さまに願かけしたりして一生懸命です。
 そうしている時です。遠方からお仲人さんが来て、ぜひ娘さんをもらいたいと言われたときには、飛び上るほど喜びました。けれども今までの例もあり、半ば不安心でもありましたが、こんどはトントン、うまく進み、返辞・定めもめでたく、いよいよ式の日がまいりました。文金高島田に振袖姿も美しい、我娘ながら惚れ惚れするほどです。
 盛大な結婚もめでたく済み、夫婦そろって我家に帰って来たときには、ほんとに肩の重荷を下ろしてホッとしました。
「よかったな、よかったなって何度言ってるんだい」
「そういうあんただって、にこにこしているんじゃない」
 なんて、他意のないことをいっています。
 今日は始めての里帰りです。新夫婦そろって招ばれて来て、「泊らないで帰ること」という言伝えがあります。聟は御馳走になって仲人たちと帰りました。待ち兼ねたお母ぁさん、早速様子をききますと、式から初夜のこと、さては二つ目のことなど微に入り細に入り話すのでした。加えて、おつきあいの話など、顔を赤らめもしないで平気で話すのです。はじめ夫婦仲のしっくりうまく行ったのを喜んだ母も堪りかね、「言わせておけば、余りな」て、スリコギ棒を振り上げると、
「おっ母さん、それより太えがったぜ」というのでした。
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