11 ほんずきと牛ほんずき

 むかし、ほんずきと牛ほんずきと居たったど。
 ほんずきは器量もよいし、稼ぎ好きの娘だったげんども、牛ほんずきは余り器量もよくなかったし、気性も荒っぽいタチだったど。ほだげんども、二人は近間でもあるし、似た年ばえでもあるもんだから、大変仲ぁよかったど。
 ほんずきは、稼ぎ好きで、毎日機織りしたり、糸撚りしたりして、一生懸命に稼ぐもんだから、「ほんずき、ほんずき」と、家の中ばりでなく、近所隣からめんごがらっだど。
 ところが、一方の牛ほんずきというど、女の子のくせに、きかないことぁするし、第一かなしがり(怠けもの)で家の衆にも、めんごがらんねし、近間からもええぐ思わっじぇなかったど。そげな気性の違ってる二人で仲ええ、何て不思議なようなもんだげんども、縁づくというのは、仕方ないもんだ。とうし遊びに来る。ほんずきも案じことして、
「お前も、ちっと糸返しでもすっどか、機織りでもしたらええでないか」
 とすすめっけんども、
「今日ぁ城下のお祭りさ行くもの」とか「今夜ぁ寝待ちだもの」とか言って、毎日遊んでいるんだど。そいつぁ衣裳というど、尻ぷり(尻の短かい着物)通し、「うう寒い、うう寒い」て、いるのだど。
>>お糸唐糸 目次へ