8 なら梨ぬぎ

 むがしあったけど。
 むがしなぁ、あるどさ、爺さまど婆さまいでぁったど。ほうしてなぁ、太郎ど 次郎ど三郎ていう三人の子供ぁいでぁったど。爺さまど婆さまぁ、一生懸命ん働 れぁで、三人さ赤 (あげ) ぁぇ魚 (とど) こで飯食 (ままか) へで、うんと大 (おが) したけど。
 野郎達ぁ十五、六もなた頃、爺さまど婆さまぁ、
「なら梨食 (く) でぁ。なら梨食でぁ」
 て、毎日いうけど。んでぁ、ほんげぁぇいうおんだおん。もえできて食 (か) へねぁ んねぁんだな。てもぎん行 (え) ぐごどんなて、太郎ぁ、にぎり飯 (まま) にきてもらて、ほれ はげごさ入 (へ) で、ほれ背負 (しよ) てもぎん行たど。
 ほうして、太郎ぁずうっと行たば、茶屋あっけど。ほごで一服つけっだば、茶 屋の婆さまぁ、
「どさ行ぐどごだや」
 て聞ぐけど。ほんで太郎ぁ、
「俺ぁ家の爺さまど婆さまぁ、あんまりならの梨食でぁていうおんださげぁぇ、 ならの梨もぎん行ぐどごだ」
 て言 (ゆ) たど。ほしたば、婆さまぁ、
「それぁええども、ならの梨もぎん行くなもええども、これがら少し行ぐど、ど んどんど流っでる滝ぁあっさげぁぇ、ほごで、滝ぁ、戻れどんどん、戻れどんど んていう時 (づぎ) ぁ、なんたごどしたて戻れよ。ほうして、行 (え) げどんどん、行げどんど んていう時ぁ行げばえ」
 て教 (お) へだど。
 ほうして、太郎ぁ行たべ。ずっと行たば、やっぱり滝ぁあっけど。ほんでだまっ て聞っだば、滝ぁ、行げどんどん、行げどんどんどんていうども、戻れどんどん、 戻れどんどんどんてゆわねぁけど。ほんで太郎ぁ、ずうっと行たど。
 ほうして行たばなぁ、ならの梨ぬぎぁあって、ほれさ梨ぁ、ほれごそ沢山 (しこでぁま) 、取 りたであならねぁくれぁなてだけど。太郎ぁ、これぁえがったど思 (も) て、一生懸命 もえで、えっぺぁもえでは、こんだ帰 (けあ) ぇらねぁんねぁなど思て、もえだ梨、はげ ごさ入 (へ) で、行ぐがなど思たども、晩方なて、薄暗 (ぐれぁ) ぐなたおんださげぁぇ、仕方ね、 ほの梨ぬぎの枝さ泊まて、だんまていだど。
 ほうして、暗ぐなたんだし、山ん中だべ。んだおんださげぁぇ、何が化物 (おの) でも 出はて来るんねぁべがど思て、びぐびぐしていたど。ほんでも、何にも出はて来 るふんねぁけど。
 ほうしてるうづん、だんだん夜中んなたべ。ほうしたば、かさっ。ぱちん。て、 木の葉なの、木の枝こなの踏む音ぁ、こっつさ来るずおん。ほうして、梨ぬぎの 下さ来て、
「太郎。お前 (んす) ぁ、何すん来たや」
 ていうけど。太郎ぁ、これごそ化物だな、ど思たら、恐 (おかねぁ) ぐなてしまて、後 (うしろ) 引込 (しこ) み引込だど。なんぼ引込でも、みっか、かつらど上て来んなだけどやぁ。ほのう づん太郎ぁ、化物にぺろっと飲まっでしまたけどは。
 家の人 (し) 達 (たづ) ぁ、太郎ぁ来ねぁどて、うんと心配 (すんぺぁ) して待づっだども、なんぼしたて 来ねずおんは。
 あんまり太郎ぁ来ねぁおんだはげぁぇ、次郎ぁ、
「兄 (あん) さん (つあ) 、何してるおんだべ。あんまり来ねぁはげぁぇ、俺ぁ行てみる」
 て、にぎり飯にきてもらて、今度ぁ次郎ぁ行たど。
 ほうして、ずっと行たば、やっぱり茶屋あっけど。次郎も茶屋さ休すだば、茶 屋の婆さまぁ、
「次郎さん次郎さん。今度ぁお前行ぐなが」
 て聞ぐけど。ほんで次郎ぁ、
「んだあ。俺も梨もぎえぐなだ」て言 (ゆ) たば、
「ほう、んだが。とごろで太郎ぁ帰ぇて来たがや」て聞くけど。
「太郎兄んつぁ、なんぼしたて戻て来ねぁなよ。んだはげぁぇ、さがしながら行 ぐなだ」
て言 (ゆ) たば、茶屋の婆さまぁ、
「次郎さん次郎さん。お前も気 (きい) つけねぁばでげねぁんだぜぇぁ、ほうして、滝ん どさ行て、滝ぁ、行げんどんどん、行げんどんどんて言 (ゆ) た時ぁ行げばえし、戻れ どんどん、戻れんどんどんて言 (ゆ) た時ぁ戻らねぁんねぁぞ」
 て教えでやたど。ほんで次郎ぁ、ずっと行たど。ほしたば、やっぱり滝んどさ 行たけど。ほして滝ぁ、
「行げんどんどん、行げんどんどん」
 てばり言 (ゆ) て、戻れんどんどんて言 (ゆ) わねぁけど。ほんで次郎ぁ行たど。
 ほうして行たば、ならの梨ぬぎぁあて、梨ぁえっぺぁなてで、次郎ぁ背負えねぁ くれぁもえだど。んでも、まだ晩方なて、暗ぐならったおんだはげぁぇ、次郎ぁ、 ほの梨ぬぎさ泊またど。次郎も何が来っがど思て、おかねぁくていだども、なん にも来ねぁけど。
「なんにも来ねぁでぁ」ど思ていたど。
 ほうして、夜中んなたば、なんだが、かさらっ、かさらっていう音ぁすっずお んや。ほうして、
「この前 (めあえ) 、太郎ぁ来たけぁ、今度だ次郎お前 (んす) が」
 て、化物ぁ出はて来たけどやあ。次郎ぁ、おかねぁくて、おかねぁくて、ぶる ぶるとふるえっだどは。ほのうづん化物ぁ、次郎ぁどごも、ぺろっと飲でしまた けどは。
 家の人達ぁ、次郎も、なんしたて来ねぁおんだし、なんずしたおんだべど思て、 困て困ていだずおんはや。
 ほんで、今度ぁ、末の三郎ぁ、
「なんだて、俺ぁ家の兄 (あん) つぁだ、役立だねぁおんだ。二人 (したり) ながらどさ泊まてるお んだが、音も沙汰もねぁぐなたおんだ。今度ぁ、俺ぁ行てさがして来る。」
 つけど。んでも、爺さまど婆さまぁ心配して、
「ええさげぁぇ、行ぐなは」
 て言 (ゆ) たども、三郎ぁきがねぁで、にぎり飯 (まま) にきてもらて、はげごさ入 (へ) で、野越 え山越え、ずっと行たべちゃ。ほうして、三郎も茶屋んどさ行たば、茶屋の婆さ まぁ、
「三郎さん三郎さん。お前どさ行ぐや」
 ていうけど。ほんで三郎ぁ、
「俺ぁ家の兄つぁだぁ、梨もぎ行て、ほのまま帰 (けあ) ぇて来ねぁはげぁぇ、何しった おんだが、見ん来たぁだ」て言 (ゆ) たば、
「ほう。ないなおんだがなや。ほれぁ心配だごったな。んでも、お前も気つけねぁ んねぁんだぜぇぁや」
 て、心配してくっで、
「ほれがらなぁ、もう少す行ぐど滝ぁあっさげぁぇ、滝ぁ戻れんどんどん、戻れ んどんどんていう時ぁ、なんたごどしたて戻らねぁんねぁぞ。ほうして行げんど んどん、行げんどんどんていう時ぁ行げばえしな」
 て教へらっで、ずっと行たば、やっぱり滝ぁあっけど。
 ほんでほごで、だまって聞っだば、行げんどんどん、行げんどんどんて言 (ゆ) て、 戻れんどんどんて言 (ゆ) わねぁずおん。ほんでずっと行たば、ならの梨ぬ木ぁあっけ ど。ほうして、ほれごそえっぺぁなてだけど。ほんでほの梨、はけごさえっぺぁ もえだど。ほうして、ほのうづ暗ぐなてしまたけどは。
「ああ、暗れぁぐなてしまたは。これだば家さ帰ぇらんねは。こさ泊まてえがねぁ んねべちゃや」
 て、ほの梨ぬ木さ泊まて、だんまていだどは。ほうして、夜中んなたば、暗闇 (くらすみ) が ら、何が来た音ぁすっずおん。ほうして、
「三郎。今度ぁお前来たなが。んでぁ、三人、みな来たなが」
 つけど。三郎ぁ、
「んだ。今度ぁ俺ぁ来た」
 て言 (ゆ) たども、恐 (おか) ねぁぐなてきたけど。ほんでも家がら刀持てきたおんださげぁぇ、
「畜生、こっちゃなの来てみろ。ぶった切 (き) てくえっさげぁぇ」ど思ていだど。ほ したば、化物ぁ、
「ああ、んだがんだが。どごいだどごいだ」
 て、手と足突ぎ出してよごしたけど。ほうすっど三郎ぁ、こん時だど思て、持 てきた刀で、化物の手ど足、だぎっ、だぎっと切ったど。ほうしたば、どだって いう音ぁして、下さ落ぢだ音ぁすっけど。ほうして、
「あぁ痛でー、あぁ痛でー」て、おえおえて泣ぐけど。ほうして、
「あんた野郎 (やろ) こに切らっだはぁ。痛では、痛では」
 て泣えっだけどは。真暗だおんだはげぁぇ、なんた化物だか分らねぁけど。ほ んで三郎ぁ、早ぐ夜ぁ明げでくえればえど思て待ぢっだど。
 ほうしてるうづん、だんだん夜ぁ明げだべ。ほんで明りぐなっど、ほの梨ぬ木 がら下りで見だば、ほれごそすこでぁま大っき狢 (むづな) だけど。
 三郎ぁ下りで行たば、狢ぁ、
「三郎さん三郎さん。まず、どうが命ばりも助けてころ。まず、お前にこの通り 手足もがっでしまたは。んだはげぁぇ、どうが助けてころ」
 どて、ぽろぽろど涙こぼすけど。三郎ぁ、
「このえぐなし畜生 (ちきしょ) ぁ、ろぐだごどしねぁはげぁぇ、ほゆおんだ。ざんまみろ。 憎ぐえ畜生だ。俺ぁ家の兄つぁだどご、どごさやた。出たねぁば、ぶった切て、 殺してくえんぞ。早ぐ出へ、この畜生ぁ」
 て言 (ゆ) たば、ほの狢ぁ、片方 (かだっぽ) の鼻くえで、ふうんてしたば、太郎ぁ出はてきたけ ど。まだ片方の鼻ふうんつたば、今度ぁ次郎ぁ出はてきたけど。
「この畜生ぁ、ろぐんねぁ畜生だ。俺ぁ家の兄つぁだどご飲みあがて」
 ていうど、泣 (ねあ) だり、痛でぁがて、うーうてうなんなば、三人でぐるぐるどふん縛 (ずば) りづげで、今度ぁ、ほごらあだりがら、棒みつけできて、ほの棒足さ通して、担 (かつ) で 家さ来たど。
 ほうしたば、爺さまど婆さまぁ、たまげでたまげで、
「こういうごどもあるおんだがや。まず、たまげだごど」
 どていだけど。
 ほうして、ならの梨も、えっぺぁ食て、喜で、
「まず、えがったえがった。三郎もえぐ仇とてきてくっだ。」
 て、うんと喜でだけど。
 ほうしてるうづん、村の人達も話聞で、皆集ばて来て、ほの大っき狢見で、た まげては、大さわぎだけど。ほうして、狢ぁ、たあだ、皆に狢汁して食 (か) っでしま たけどは。とんぴん からんこぁ ねぁっけどは。
(話者 高橋タケヨ)
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