28 屁っぺり爺

 むがしあったけど。
 あるどさなぁ、爺ど婆んばいでぁったど。爺ぁまだなぁ、、毎日田さ行たり、畑仕事なのしてでぁったど。ほうしてなぁ、今年ぁ餅米もええぐ出来(でげ)だんだし、豆も沢山(でっつら)とっだはげぁぇて婆んばどさ、
「婆んば、婆んば、今年ぁ餅米もええぐ出来(でげ)だし、豆も沢山(えっぺあ)とっだはげぁぇ、黄(き)粉(なご)餅でもこしぇで食うがや」
 て言(ゆ)たけど。ほんで婆んばも、
「んだな爺、黄粉餅なの暫く食たごどぁねぁはげぁぇ、んでぁ搗(つ)で食うがや。なんぼがんめぁぇべな」
 て、二人(したり)ぁ相談して、黄粉餅作(こしぇ)るごどんしたど。
 ほうしてなぁ、夜んま婆んば豆炒て、黄粉作(こしぇ)だど。ほうして二人ぁ寝るごどんしたど。んでも下さ置けば猫になめらえんべす、上(ゆえ)の棚さあげで置げば、ねずみに食れんべす、何所(どご)さ置えだらええべど思(も)て、困ては、婆んば、
「なぁ、爺。この黄粉、下さ置げば猫になめらえんべす、上の棚さ置げば、ねずみに食(か)れんべす、仕方ねぁ、おら達(だ)寝る間(えあだ)さでも置えで寝っがはや」
 て言(ゆ)たけどや。ほんで爺も、
「んだな、んでぁ仕方ねぁ、ほげぁぇんすんべ」
 ていうごどんなて、ほの黄粉、爺ど婆んば寝だ間さ置えで寝だけど。
 ほうして、ほのうづん、夜中んなたべ、ほしたば、ほのうづん爺ぁ、すこでぁま大っき屁、ぶうーっどたっだど。あんまり大っき屁たっだおんだはげぁぇ、黄粉ぁみな飛(と)でしまたけどは。
 ほうしたら、上でねずみぁ、
「爺ぁ屁の実ぁ、んーめんめ」
 下でぁ猫ぁ、
「爺ぁ屁の実ぁ、んーめんめ」
 てたぁだ鼠と猫に、黄粉なめらっでしまたけどは。とんぴん からんこぁ ねぁっけどは。
(集成三八八「爺婆と黄粉」)
〈話者 高橋良雄〉
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