43 法印と医者と軽業師

 法印さまど医者さまど軽業師と三人あったけど。その人たちは突然病気で逝く
なったんだど。
 最初に逝くなったのが法印さまだったそうだ。地獄極楽の分かれ道、とことこ
行く。ところが極楽さ行く道の方は立派な道で、きれいで明るくてどんどん歩く。
ところが地獄さ行く道は薮やらで、やっと分けて歩かんなね。ゴロやらで何とも
歩かんねような道だ。
 そこんどこにエンマ王が居である。分かれ道さちゃんと立って、ほうして、え
え人と悪れ人、姿見という鏡があった。これは娑婆にいたときのこと全部鏡に写
る。はいつ見て、娑婆にいたときには、どういう風な生活をしていたか、何とか
ということ、その鏡にすっかり写るんだど。それを見て、エンマ王が裁くのだど。
 ところが、ほの法印さま通りかかったところが法印さま、
「お前は何者だ」
 て、エンマ王が言うわけだ。
「おれは法印で御祈祷する。家内安全、五穀豊穣、さまざまな御祈祷する法印だ」
「だまれ、お前は人をたぶらがして、世にいたときにはこういう風にしったけ」
 鏡ちゃんとそこさあって、なんぼなんぼ呉ろなて、みな現われんなだていうん
だ。こういう風にしねげば五穀豊穣しねなんて言うたところが、みな現わっでる
なだど。
「お前は泥棒以上だ。こういうことしている。んだからお前、地獄さ行げ」
 止むをえず地獄さ行く道とことこと出かけた。
 ところが後から来たのが医者さまだ。
「お前、何者だ」
 ところが、
「わたしは医者さまで、人を生かす商売でございます」
 ほうしたところが、その鏡さ、今までやってきた奴がみな現われんなだど。
「ほう、お前、医者さまだなて、何だ。医者さまは家業はええ商売だげんども、
お前は何年の何月に薬をごまかして飲ませた。注射を間違って人を殺した。さま
ざまなそういうことが、ちゃんとこさ現われる。エンマ王だけでなくて、われ見
ても分かる。いやいや、お前は極楽さ行ぐのでなくて地獄だ」
 て、ほうして地獄さ追わっだ。ところぁ、後からきたのが軽業師、
「お前は何者だ」
 ほのエンマ王に言わっだ。ところが、
「わたしは軽業師で遊芸人で、人をおもしろく笑わせる芸人でございます」
「なんだ、なんだ、こりゃ見ろ、見ろ。ちゃんと出っだ。お前はまるで人を誤魔
化す商売だ。こういう商売をしてで、人をたぶらかす商売してで、人をたのしま
せるなて言うたて分んね。お前も地獄だ」
 ほうして、したところが前にいた法印さま、医者さまと軽業師だ三人、
「いやいや、ひどい目に会ったな、んだらばおらだ三人、地獄さっだな」
 ほうして地獄の方さ、三人とことこと行った。ほうして行ったところが、何と
すばらしい門構えだと思ったところが、ほこんどこにえらい青い鬼、赤い鬼、さ
まざまな鬼共だ、「ああ、きたきた」て待ってだ。
「お前がた、娑婆にいたとき、ろくな事しねぇから地獄さ来た。お前がたはここ
さ来たって何だから、油いりしてしまえ」
 見たところが大きな釜さ油どんどん入(い)っで、煮立てて、「こいっちゃ入(はい)ろ」。
ところぁ、すばらしい、ブクブク煮立った釜だ。軽業は、
「いやいや、困った。こだなさ入ったらば死んでしまう」
 ところが法印さま、
「お前だ心配するな。油湯なの、何も差支えない。おれ、早く入っから」
 法印さま、呪文となえた。ところが今までブツブツ煮立ってだ油、すうっとし
て、ただ湯気(いき)立つだけだ。
「はぁ、みんな入ろ、入ろ」
 ほうして大きな油釜の中さ、法印さま先になってザブリと裸になって入った。
「ああ、ええお湯だ。油湯さ入ったことない。こりゃ気持ちいい、さぁみんな入
ろ、入ろ」
 ところが三人が入ってみたげんど、丁度ええあんばいだていうんだ。鬼共だ、
「ああ、火焚け、火焚け」
 て、赤鬼の王さま、きゃんきゃんいうげんども、いくら火焚いても平気で入っ
ている。
「こりゃ、こだな野郎べら、何とも仕様ない。こいつぁ油で煮だったて何ともわ
からね。ああ、お前だ、上がれ上がれ。お前だ、こんど剣山さやる」
 て、みんなば上げて、剣の山さみんなば登らせた。ところがほれ、剣びっしり。
困ったのが法印さまと医者さまだ。
「剣の先渡られるもんでない。こりゃ困ったもんだ」
 て言うたところが、軽業師、
「よし、おれ渡ってみる。何も差支えない」
 娑婆にいたときの軽業だ。刀の先、はやしながら渡って行く。
「いや、やるもんだ、野郎。ほんじゃまず何とも仕様ない。もっとうまい方法な
いか」
「何もない」
 て言うなだ。
「ほんじゃ、赤鬼の大きなの連(せ)てきて、飲ませてしまえ、三人ば」
 て、ほうして三人呼ばって、一人ずつ飲んだってな。チョロン、チョロンと。
 ところが医者さまだ。飲むときには歯こぼれる薬、歯さかけた。ほんで歯ぺろ
り欠けてしまった。んだから噛むわけに行かね。生(い)き飲みしたんだど。ほうして
中さ入った。
ところが医師さま、腹わたの構造語るわけだ。
「こりゃ、こいつたれっどな、マラおがるんだ。こいつ引っぱっどアクショ出る。
こいつ引張っど、ほれ、引張ってみろ。これ押っつけっどラッパと同じ屁出んな
だ」
 て、ほういうこと教えだっていうんだな。医者さまだから、一、二、三でやっ
てみろて、ほうして一、二、三で引張ったって。
「わっしょ」ていうど、「ブー、アクショ、ボギン、ブー、アクショ、ボギン」
 ほりゃ。何ともかんとも赤鬼はししゃますして、何たて止めようない。こりゃ
困った。ほれから、ししゃますして指突っ込んで三人ば引張り出して、
「お前たちはとっても駄目だはげて、行げ」
 て、追(ぼ)ってやったど。娑婆さ追ったって。
(砂子関・工藤馨)
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