41 屁たれ嫁

 嫁は真青な顔になっていっさげ、「なえだ、姉。何てかあんなだか」て言うたら
ば、嫁は、
「屁出たくて、おっかさん」て言うたって。
「ほだな、屁なの、たれろちゃ」
 おっか、ほう言うたれば、
「んだか、おっかさん、アテギさ、たずいてで呉ろ」
 て言うたなて。ほして、
「アテギさなのたずかねったてええから、屁たれろちゃ」
 ていうたれば、屁たっだれば、その嫁さまの屁ぁ大きくて、姑さま吹っとばさっ
じゃど。裏板さひっついだど。
「姉や、屁口とめでけろ、屁口とめでけろ」
 ほして、
「こだな嫁、なんぼなえたてはぁ、置かんねはぁ、おれ見送って…」
 て、家さ追出して追(ぼ)出しやったど。ほしたれば、馬方、馬ひいて来っけて。
「ほお、こだな馬、屁で吹っとばすような馬だな」
 どかて、いうたてな。その嫁さまよ。
「んだら、屁でなの吹っとばすいごんだら、吹っとばしてみろ。屁でなの吹っと
ばしたら、馬一頭呉っさげ」
 て、馬引いっだ人いうたど。ほしてやっぱり屁たっで、馬一匹もらったんだど。
ほして、こんど、馬一匹もらって、馬ひいで行ったれば、柿の木さ柿いっぱいなっ
たな、柿もぎしった人いだっけて。ほしたれば、
「ほっ、ほだえして一つずつなのもぐなで、おれ屁たれっど、みな一人でもげる。
屁でもいで呉る」
 どかで。
「ほだら、もいでけろ」
 て、ほの嫁また屁たっだれば、嫁の屁で柿はまたボダボダとほろげだど。ほし
て馬さいっぱい柿もらって、嫁ぼだしてやらんねて、柿と馬ともらって、ぼださ
ねで家さもどったけど。
(砂子関・工藤かなえ)
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