21 桃太郎

 むかしあったけずまなぁ。
 ばんちゃ、洗濯に行ったれば、赤い桃と白い桃流っできた。
   白い桃 ほっちゃ行げ
   赤い桃 こっちゃ来い
 て、ばんちゃいうたれば赤い桃だけこっちゃ、ツプツプ、ツプツプ流っできた。
ばんちゃが拾い上げてきて、戸棚さしまっておいだ。じんつぁが山さ柴伐りに行っ
てきて、町に売らんなねなだから、帰ってきて、二人で割って食うべと思って、
ここさ持ってきて、庖丁とマナイタの上で開けんべと思ったら、子どもが生まっ
だど。ほんで桃太郎ていう名前つけだど。
 その桃太郎さんが、だんだんとうまいもの食せだり、まったりしたら、大きく
なって、じんつぁとばんちゃ、いつまでも若くなるように、鬼が島さ鬼退治に行
くことにしたけど。退治に行って桃太郎が途中で腹減っど悪れから、キビ団子搗
いてやるって、ばんちゃ言うて、ほしてキビ団子をたくさん腰さつけで行ったら
犬が山からトントンとやってきた。この犬さんは、
「桃太郎さん、桃太郎さん、どこにござんなだ」
「おれは鬼が島さ鬼退治に行くんだ」
「んでは、わたしさもお伴させて呉(け)らっしゃい」
 ほうしているうちに、
「んだれば、お前ちゃもキビ団子一つ上げましょう」
 ていうわけで、キビ団子一つ上げだ。ほしてまた行ってるうちに、お猿さん来た。
「桃太郎さん、桃太郎さん、どこへ行ぐ」
「鬼が島さ、鬼退治に行く」
「んでは、わたしばも連れて行ってけらっしゃい」
「んだれば、お前ちゃもキビ団子上げましょう」
 一粒食せだど。ほしてまた行っているうちにキジさんがきた。ほして、
「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさ行ぐ」
「鬼が島さ、鬼退治に行く」
 ほして、キジさも、
「お前ちゃも団子上げましょう」
 て、一粒上げて、後はしまったけど。ほして山に登ったところが、高いところ
に門番がいだんだど。赤鬼、青鬼もいだんだけど。これをどうしたらこの門を破
れるかて考えた。表の門は犬さん、裏門は猿さん、ほしてこの門をあけることで
きないがったど。堅い門だから。
 ところが、キジには羽根がついてるわけだべ。ほして、飛びこえて、ほの錠を
はずした。ほして鬼を退治した。喰ってかかって、ワンワン犬にはかかられる。
猿にはかかられるで、とうとうみな子分だ殺さっだど。ほして殺さっでみたれば、
一番の大将鬼がいた。そして降参したんだど。
「人をさらって、食ったり、まったりすっこんだら…」
 ていうたら、
「全部、宝もの、お上げすっさげ、どうかおれば殺さねで、勘弁して呉らっしゃい」
 こういうわけだど。ほして宝物をつんで、大きい鬼だけ助けてきたんだど。ほ
して来(く)っどき、ほれ、猿さんが後押しで、犬さんが車ひき、キジさんが綱引きだっ
たど。
「犬は引き出す、エンヤラヤ。猿は後押し、エンヤラヤ。キジが綱引く、エンヤ
ラヤ」
 て、帰ってきたど。
(砂子関・工藤かなえ)
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