20 猿聟

 水かかんね田さ、猿から水かけてもらったど。ほんで娘を猿に呉っことにした。
 親孝行な娘、三番目んなだかの娘が嫁に行くどこだどな。相手は猿だ。
 嫁に行って、こっちの実家さ泊りに行くに、何もってったらええがんべていう
たらば、
「餅好きだはげ、餅ええ」
 て言うて、娘が餅搗かせて臼がらみ猿ちゃ背負わせたのよ。
「重箱さ入れっど重箱くさい、土さ置くど土くさくて食んねはげて、そのまま降
ろさねで」
 て、ほのまま背負わせだのっだな。
 橋かかったどこさ来たれば、きれいに桜花咲いっだどころさ来たはげで、
「この花一枝持って行ったら、うんと喜ぶべ」
 て、ほの娘いうたれば、猿が、
「ほんだら持って行ぐ」
 て言うなで、臼がらみ背負って木さ登って花とっどこだ。
「この花か」ていうど、「ここんね、もう少し上」「いま少し上」て、だんだん上
の方さ登ったんだな。細いどこ行ったはげ、木ぁ折だっで、川さジャボンと入っ
たんだど。ほして、川に流れっどき、
   猿沢に流るるいのちはおしくなけれども
      あとに残る お姫 かわいや
 て、歌ったんだけど。ほんで娘は家さ戻ってきたんだど。
(砂子関・工藤あきえ)
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