19 猿聟

 おじいさん、三人の娘持ったけど。ほして、前田千刈り、裏田千刈りと二千刈
り持っているうちに、前田千刈りの方はいつでも水ぁかがっていっけんども、裏
田千刈りていうどこには、水はいつでもかかんねくて、干(ひ)ってるていうのだど。
 ほして、おじいさんが、こんど石の上さ腰かけて、
「この田に水だっぷりかけて呉る人あったらよ、娘三人持ったな、どれでも一人
ええな呉っけんども」
 て言うたれば、猿ぁ聞きつけてよ、
「おれ、水かけて呉る」
 て、かけて呉だどこだど。
 ほして次の朝、田の水見に行ったればよ、水だっぷりかがっていだっけど。ほ
しておじいさんが困って、困ってはぁ、家さきて、寝っだどこだど。して一番大
きい娘、ほれ、
「おじいさん、おじいさん、御飯あがっしゃい」
 て、起こし行ったれば、
「んだら、猿さ嫁に行んか」
 て言うたれば、
「嫁なて、猿の嫁なて、誰行んか」
 て、戸閉めてきたど。ほしてまた、おじいさん困って、困ってよはぁ、寝っだ
れば今度、真中の娘よ、また、
「おじいさん、おじいさん、御飯だ」
 て起こしたど。またおじいさん、
「んでは、猿さ嫁に行ってけるが」
 て言うたれば、
「なんだて、猿の嫁など行かね」
 て、また戸閉めて帰ってきて、こんど一番ちっちゃい娘行ったんだど。ほした
れば小(ち)っちゃい娘、
「おじいさんが呉でやっどさなど、どさでも行ぐ」
 なて、いうど。ほしたら喜んで、おじいさん起きて御飯食べて、猿来ん(く)な待じっ
だど。ほしたれば約束どおり、
「おじいさん、おじいさん、娘をもらいにきた」
 て、猿ぁきたど。
 ほして、仕度して、千なりフクベンと針千本と、
「お土産はこいつだはげな」
 て、娘さあずけてやった。ほして、
「行く途中に、こいつば、こぼして行げよ」
 て、ゴマを持たせてやったど。ほして娘、猿と一緒に行きながら、ゴマ、ぽろ
りぽろりと、ところどころさ落としてきたど。
 ほしてるうちにこんどは、桜の花咲いだど。んだはげて始めて、一ぺんも行っ
たことない、桜の花、お土産持って(たが)よ、泊まりに来るなだけど。
 餅搗いて背負ってくることにしたど。猿ぁ
「おじいさん、アンコ餅か」
 ていうたれば、
「アンコ餅なて鍋さ取っど、鍋くさいて好かねかも」
 ていうたど。
「んだら、納豆餅か」
 ていうたれば、
「納豆餅などすっど、木鉢の匂いするて、好かねも」
 て、娘言うどこだ。「ほんでは臼ままか」ていうたれば、うんと喜んだど。「食
う」て、娘言うどこだど。ほして、ほりゃ、臼のまま背負って来たらばよ、川ぷ
ちさええ桜咲いっだけど、ほして、
「あの花だら、一枝欲しいちゃ」
 て言うたらば、猿は、
「ほんじゃ、臼おろして取って呉る」
「いやいや、臼、土さおろすど、土くさくなるから、好かねていうから」
「ほんじゃ、背負ったままか」
 て、登ったど。ほして、「この枝か」て言うたれば、
「いま少し上んなええ」
 て、どこまでも登せて、「この枝か」ていうたれば、臼背負っていたから、枝折
れて、猿は川さ落ちたど。ほしたれば針とフクベンよ、猿は助けて呉ろて言うた
ら、
「このフクベン沈めて呉(け)っこんだら、助けっす、んねごんだら助けね」
 て、娘いうてよ、猿は一生けんめいになってだら、弱ってきたてよ。ほこさ針
ぶっつけてやって殺したなてよ。ほして娘ばり帰ってきてよ、親孝行したど。どー
びん。
(月山沢・遠藤あさえ)
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