6 猿と蛙の寄合餅

 猿と蛙(びっき)、餅食(く)だくて仕様なくて、猿と蛙ぁ相談したど。
「あの、餅なんとかして持ってきて食べる工夫ないか」
 て、相談した、猿と蛙はな。猿は、
「蛙もさ、蛙もさ、何かうまいないがぇ」
「いや、あだな持って来(く)るぇ(来れる)。お前さえもあれば、大丈夫だなぇ、猿も
さ」
「ようし、んだらばお前、何かうまい方法あっか」
「ある、ある。裏の溜(ため)さ、おぼこの泣き声上げて、おれが溜さ入っから、あそこ
の家に子どもがいだはげ。そのうち、お前、餅搗いっだな背負え。ここまでな。
ほうすればこいつぁ確かにうまく行く」
「ほだなごんだら、雑作ね。おれぁ背負ったな、ほだな、あそっから荷縄持(たが)って背
負うから」
「よし、んだら、ほうすんべ」
 て、蛙はピタリ、ピタリ、裏の溜さ入って、小さなおぼこの泣き声、オギャア
オギャアて、溜さ入って泣いっだ。ところが、
「ほれぁ、おぼこ、溜さ入った、んねが」
 ていうわけで、餅搗きやめで裏の溜さ行って一生懸命かましたげんど、居ね。
「なんだて、いね」
 蛙はそのうちピョーンと跳ねて、ほしたら、
「なんだ、蛙だ、こりゃ」
 ていうてるうち、猿もさ、荷縄持(たが)って臼がらみ高いどこさ登ったって。そした
ら蛙もピクタラ、ピクタラ、その後登って行ったど。したら裏の高い山さ登った
ところが、猿は高い山まで、やくさら(わざと)登って、たいがい蛙登ってきたかっ
て、木さ登って見っだっけ。そうしているうちに蛙は後から追っかけて行ったど。
「あぁりや、こわい、こわい(疲れた)」
「何、蛙もさ、こわいなて、おれはまだこわがった」
 ていうわけで、上さ登っていだっけ。ほうして、
「ええがったなぁ、まず、猿もさ、んだれば分けて食べだらええがんべ」
 て、蛙いうたど。ところぁ、猿賢い猿だから、食せっだくない。蛙さ、
「蛙もさ、蛙もさ」
「何(なえ)だ」
「ん、おれぁ、こっから臼、こいつ餅入ったまんま、まぐっから(転がすから)
早い人勝ちで、早く追っかついた人が食うこ、すんべなぁ」
「ほだごど言(や)ねで、食せてけらっしゃいちゃ。おれなの少し食うど、たくさんだ
から」
「いやいや、ほだごと行かねっだな。まぐった方がええっだな」
 ところで、臼まぐってやっだと。臼だし、高いところからまぐったもんだから、
飛ぶようにまぐっでしまった。猿は早いから、臼さそのまま追っかついて行った。
ところが蛙は、ほれ、
「あの、猿もさ、ずるすけ、ほに。おれが行がねげば、餅なの食んねのに」
 て、ピクタリ、ピクタリ跳ねてきた。ところがほれ、餅ぁちょっと行ったれば
すぐに下さ落っでだていうんだな。ほうして猿は臼さ追っかけて行って見たげん
ど、餅ぁさっぱりふっついでいね。
「ほりゃ、大変だ」
 蛙はすぐ後行って、餅見つけて、デグデグビリと食っていだっていうんだ。ノ
ドふるわせて、腹くっつくして。
 ところが猿もさ、間もなく登ってきた。ほして、
「いやいや、いやいや、蛙もさ、悪れがった。おれちゃも分けて食せろ」
「いや、お前、臼でも舐めでいんだ。おれの言うこと聞かないで、お前ちゃなの
食せらんね」
 んだげんど、こだえいっぱいあんのだし、一人では食んねしなぁ。
「分けて食せで呉ろちゃやぁ」
「ほうか、ほだら尻(けっつ)向けろ」
 蛙は冷(つ)ったい手で餅の中のあついどこ、尻さビダッと。さぁこんど尻毛さ餅ぶっ
つけらっで、ひっついで、「あっあつい、あつい」て、むしって食ったげんど、尻
の餅、なかなか取んねがったんだど。まびっでしまってな。ほうしてやっとのこ
と、へがして食べた。んだげんど、まだ食だいていう。
「また、ええか」
 て、あついどこ中からとって、ベダッとぶっつけてやる。
「あっつい、あっつい、うまい、うまい」
 そのうち、猿の尻は真赤になったど。んだからずる賢いことすんなという話だ
ど。どーびんさんすけ、さるまなぐ、さるのけっつはまっかっか。
(砂子関・工藤馨)
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