5 ねずみの角力とり

 むかしむかし、あるところに、じんつぁとばんちゃいだった。
 ところが、ほのじんつぁとばんちゃ、なんぼかせいでも根があまり正直なもんだから、もうけらんねくて、言うたら、貧しい暮しだった。
 て、ちょうど、隣にすばらしい長者さまいて、金持ちで、働いたこともなく金持ちだった。おかしいこともあるもんだなて、いた。
 そしてある時、山さかせぎに行ったれば、ほこでねすみが角力とりしったけど。〈よいしょ、よいしょ〉て。ほうしたけぁ、ほのやせねずみと(こえ)っだねずみと角力とりして、(こえ)っだねずみに、やせたねずみが、こてんぱんに〈さんざん〉やらっでいた。
「はあ、かわいそうなもんだ。どこのねずみだべ」
 と思っていたれば、人の気配したもんだから、ねずみは逃げて行った。逃げて行くとこ見っだれば、太ったねずみが長者さまのねずみで、やせったねずみが自分どこのねずみだったて。
「ははぁ、こりゃ、おらえの家にはうまいも何もないから、落ちこぼれもないもんで、()えらんねくて、角力まで負けていんなだ。よし」
 ていうわけで、家さ来て、
「ばんちゃ、ばんちゃ、こういうわけだ」
「んでは、じんつぁ、ねずみさ餅掲いて食せだらええがんべな」
「はいつは、ええごんだ」
 て、餅掲いて、裏板さあげっだ。
 ところが、ねずみはほの餅食って、次の日また角力とりに行った。ところが餅食ったれば、ほれ、力出て、対等の勝負した。ほの()えっだねずみは、こんどは汗ふつふつかいで、何とも仕様なくなって、
「なして、お前、ほだえ強くなった」
 て言うたれば、
「実は、おらえのどこのじんつぁん、ばんちゃんが親切で、おれさ餅御馳走して()だんだ」
「餅ていうな、ほだえ力になるもんだか」
「ほだ」
「んだらば、おれも御馳走なっだいがら……」
 ていうわけで、ほの()えっだねずみが、次の日から、長者さまの小判背負って餅御馳走なりに来た。ほして餅御馳走なって行って、広場で角力とりすっど、両方で餅食ってがらはぁ、仲々勝負つかね。まずほとんど引分けの勝負ばっかりだ。
 ほして、毎日餅続けた。ほうすっど毎日小判背負ってきた。いつの間にか、じんつぁとばんちゃがすばらしく金持ちになってはぁ、ねずみのおかげで金持ちになったど。んだから、正直に、親切にすっど、いつかむくいらっで、金持ちになるもんだて言うたけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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