2 狐のお産

 むかしとんとんあったずま。
 ある田舎の五、六軒しかない部落に、非常に子()させの上手な産婆さんがいだった。
 ところが、ある晩、
「難産したから、取上げてもらいたい」
 て、四、五人して迎えに来た。ほして何だか道の狭いようなどこ、どことなく連れて行がっで、そして何だか人家でないようなおかしいとこもあるもんだと思って、ずうっと行ったって。したればやっぱりその産婦が非常に苦しんでいだって。
 ほして、日ごろ慣れた手つきで、首尾よくほの難産取上げて()だ。ほしたらば、
「いやいや、おかげさまで、まず、取上げてもらった」
 というわけで、ほして、何がしの御馳走になって、ほしてたくさんお金頂戴して送ってもらって来た。途中まで来たれば、ほの送ってきた人が、
「ここで勘弁して呉らっしゃい」
 ていうたって。
「なしてだ」
 ていうたらば、
「村さ行ぐど、犬いっから、犬恐っかなくて、とても行かんねがらお願いします」
 ていうて、途中から帰って行った。家さ来て見たれば、何だ体中きつねの毛だらけだったど。つまり、ほの狐のお産さ行ったんだったど。
「んだらば、狐では、貰った金は木の葉だべ」
 ていうわけで開けてみろっていうわけで、金あけてみたれば、どっから集めてきたか知しゃねげんども、木の葉どころか大判・小判だった。そこの家は今でもそのときから、それを(たね)(せん)にして米買って売ったりして、金持になったていうて、狐に金持にしてもらった家だていうの、後あとまで話に残ったけど。どんぴんからりん、すっからりん。
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