(1)ネズミとり

 冬になっど、百姓はみな藁仕事していると。左平は賭好きで、
「いやいや、あそこに四つの足の鳥いたっけ、四つの足の鳥、篭さ入ったけ」
「この野郎、四つの足の鳥なんていないべちゃ、鳥ぁ二本足だべちゃえ」
「ほんじゃ、賭すっか、いたぜ確かに」
「あんまりええ、賭すんべ、四本足など持っている鳥、世の中にいないから、オラだ勝ったぞ」
「いやいや、お前の負だ。実際見て来たなだぜ、篭さ入ったな」
「んじゃ、行ってみろ」
 というもんで、みな行ってみたというんだな。そしたれば、やっぱり鳥篭さ猫入ったけど。
「ほら、見ろ四つの足の鳥いたどれ」
「鳥であんめえちゃえ、猫だごで」
「鳥だごで、ネズミとりという鳥だごで」
 そして左平に賭負けたというのだと。
(椚塚 佐藤宇之助)
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