27 おぶさろの化物

 むかし、孝行な息子いたったと。ところがその部落に小川が流れていて、橋掛かっていたと。その橋の下から、夜ふけになると、
「おぶさろー、おぶさろー」
 と声かけて、得体の知れないものが出てくるということだったと。誰もその姿見たことないげんど、そういう声するもんだから、夜になっど、誰もそこ通らんねくなったずだ。その孝行息子は村人ばおっかながらせるものだれば、
「オレが見届けてくる」
 と、夜更けに行ったら、
「おぶさろー、おぶさろー」
 と出て来たと。
「おぶさっだいごんだら、おぶされ!!」
 と、背中出したら、まず、何十貫目とあるようなものが、おぶさったと。どっこいと背負って、家さ帰っと、台所さおいてみたところ、行灯(あんどん)の光で見っど、大きい瓶だ。蓋(ふた)をとってみたところが、すばらしい黄金だったと。

 白鷹町にも同様の話があり、ストーリーもほぼ同じであるが、白鷹町のものは、「だから化物はこわくない」と言い、赤湯のこれは孝行息子の話になっている。
(椚塚 佐藤宇之助)
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