21 馬と納豆

 むかし、ある村に、馬を大切にしている馬子がおりました。夏の暑い日には、馬のカイバに困るので、馬子は豆を煮て藁に包み、それを馬の背につけて、荷物運びをしておりました。あまり暑いので、木影に休んで馬にモノを食べさせようとして、煮た豆のカイバを降して藁を開いてみると、豆は腐れたようにネバネバした糸が沢山出ていました。
 馬子は手についた豆をなめて取ろうとすると、とても香りがよいので、食べてみると、すばらしい味でした。馬子は馬に食わせることも忘れて、
「これはなんとうまいこと」
 と、すっかり食べてしまいました。そこで家に帰ってから、また作って村人に御馳走しましたが、こんなうまいものに、名前がないので、「なんと美味なもんだ」ということから、『納豆』とつけたとさ。
(金沢 新関光造)
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