(7)植木売り

 左平が松の木の恰好のええのを切ってきて、土さ植えて鉢を持(たが)って行ったと。旦那衆の家さ行って、
「植木持(も)した」
「なんぼだ」
「いや、なぁに、なんぼなて、旦那のええほどでええごで、俺ぁ唯もって来たんだもの、値なしでええごてはぁ」
 そして、
「値なして言わっだって、せっかく掘って来たんだから…」
 と、金を払ったずも。
 ところが左平のもって来た植木は土にさしたばりだから、根っ子ないごんだ。旦那のところに左平が次に来たときに、
「なえだ、まず左平、貴様、せんど、ころっと欺して、根っ子のない松の木持って来たどれ」
「ほだから、旦那、根なしでええと言うたどれ」
 と言うたど。
(上野 高橋照太郎)
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