(4)ローソクを持ち出した話

 米沢藩では、ローソクはやたらに他領さ出さねことにしていたと。
 左平はお番所(ところ)を通るとき、大きいお茶箱さ、こげな小っちゃなローソクの破片(かけら)一つ入っで来たずま。
「これ左平、何背負って来た」
「ローソクだ」
「ローソクは持って行っては駄目だ。開けてみろ」
 と言われて、開けてみたところ、箱の中に、こげな小っちゃなローソクの破片(かけら)一つしか入っていなかったと。
「はつけなもの(そんなつまらぬもの)、差支えないから早く持って行け」
 と言われた。その次は、ぎっしりいっぱい持(たが)って来て、
「ローソク持(たが)って来た」
 と言うと、
「ああ、左平ローソクだら、ええ」
 と言うた。それから左平はローソクをかまわず持って行かれっかったど。
(大橋 川井弥右衛門)
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