4 糠福米福

糠福は前のおっかさんの子供で、米福は今のおっかさんの子供だったど。そして栗拾いにやられっけんど、おっかさんは米福さ、
「お前は小っちゃいから、姉さの後ばり行けよ」
と言ったと。
糠福の方さは底のない袋あずけたので、なんぼ拾っても溜んねがったげんど、その後ついて行く米福の方は、姉さの後拾って歩いたと。んだと、妹の方のばりいっぱい溜るもんだから、ええ頃たまったから、米福は、
「家さあえべは(帰ろうよ)」
と言うと、
「オレ、なんぼ拾っても溜んねし、帰るとおっかさんに怒られる(ごしゃかれる)ばかりだから、オレはこのまま家さもどらんね」
と言うたと。そして姉さは家さ来ねで、ずうっと山の奥さ、当てどなく歩いて行ったら、大きな堤みたいなあったと。その堤の向うから、何か魂みたいなものが、堤を泳いで来たと。そうすっど晩方だべし、糠福は「オッカナイ、オッカナイ」と泣いたと。
「オッカナクない、おっかさんだから、オッカナクない」
 と魂みたいなものが言うたと。んだもんだから逃げないでいたらば、そいつが糠福のおっかさんの魂で、
「何でもお前の欲しいものあっときは、こいつを三べん振るずと、何でも出っから」
 と打出の小槌、呉れらっだと。そしてその打出の小槌もらって来たもんだから、こんどは家さ大急ぎで来て、
「栗出すから、蓆敷いておくやい」
 と言うたげんど、「一人で敷いてしろ」と言わっで、一人で蓆敷いて、栗を出したと。
 そのうち、お祭り来たらば、おっかさんは自分の子供の米福ばりつれて、お祭り見に行ったんだと。糠福は米搗きしったげんど、お祭りさ行きたくて、ええ衣裳を打出の小槌で出して、駕篭も出して、駕篭さのってお姫さまみたいにして行ったと。そうすっど、おっかさんと米福がお祭り見しったのを駕篭の中から見て、あんまり憎らしいので、瓜の皮ぶっつけてくれたんだと。そうすっど米福はその瓜の皮くれらっだんだと思って、拾って食ったんだと。糠福はわらわら駕篭の中からお祭りを見て、一足先に帰って来て、一生懸命米搗きしったと。
 妹が帰って来て、
「いやいや、今日、お祭り見に行ってお姫さまに瓜の皮もらって食って来た」
 と教えたと。
「そんじゃ、お前ばりええがったな」
 と言うて、知らない振りして稼いでいたと。んだから、おっかさんにとてもいじめられっけんど打出の小槌で幸福に暮したと。とうびんと。

 お祭りの芝居を見に行って糠福が殿様にみそめられて、嫁に所望されて、家に来ると、殿様の家来が来て、米福を殿様の嫁にしようと母親と問答する。その後で糠福が駕篭にのって嫁に行く。米福可哀さに、池の廻りをゴザにのせて母が引きずって行って米福を池に落してしまう話が、白鷹町・小国町で採集されている。
(宮原 山崎ヨシエ)
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