52  オサイとヨウジ-お糸唐糸- 

 あるところに、おかあさんが死んで後妻もらった家あったど、先妻の子ぁオサイと名付って、後妻の子どもはヨウジと名付ったど。そしたら後の子ども可愛いげども、先妻の子は憎くまっでなぁ、いつでも着物も粗末、食べものも別であったそうだ。んだげんども、姉思いでな、妹ぁ。かぁちゃんが牡丹餅をして、二人に与える。そして妹と並んで食べてた。
「姉さんの餅さ、アンコいっぱいついっだ。姉さんのな食(く)だい」
 て言うたど。そしたら、
「お前だって、びっちり掛けっだもの、そがえに人のものは食べらんね」
 そうすっど、仲よしの姉妹だから、
「ほんじゃ、一つずつ分けて食え」
 て、姉さやったけど。
「いやいや、そがえに他人のもの食べるなて言うていらんねがら、ほんじゃ二人に食せらんね」
 て、かぁちゃんが取ったど。そしたら、姉の方さ毒ぁ入っていたけど。妹の方さええな。んだから小豆をたっぷりかけて、姉に食せるつもりだったの、二人ぁ牡丹餅食ねでしまったど。
 そしてやっぱり、時々いろいろせめらっでいて、そしてある時、軽い毒でも食せらっじゃか、箱を拵って姉の方を箱さ入っで、そしてその稼ぎ人に背負わせて、
「山さもって行って埋めて来い」
 てやったど。そうすっど妹は賢こいから、その箱の下さ小さい孔をあけて、ケシ粒を姉に与えて、
「こいつを孔から落し落し、その山まで持って行け、そうすっどおれぁ探ねて行って、掘っからて、そう言うて、そして行ったそうだ。そして箱さ入れらっではぁ、行って山さ埋めらっじゃど。こんど妹は後から行って、ずうっと行ってみたら、ケシ粒が育(おが)ってずうっと生えて、そこ辿って行ってみたら、奥山さ掘ったあとある。掘ってみたら埋まっていた。そしてその箱を出して、
「姉さん、姉さん」
 て呼ばっだら、細い虫のような音であった。それからその蓋を開けてみたら、姉さんを出して、おにぎりいっぱい持って行って、姉さんと分けて食って、
「家さ帰れば、またかぁちゃんにせめられる。それよりここから逃げた方ええ」
 て、二人で、やっぱり山の細道通って行ったら、部落さ出来たかな、そして部落の一番大きな家さ行って、まず頼んでみたら、
「あまりええからおら家で使うから、姉は御飯炊き、妹は子守」
 て、二人で同じ家さ入ったそうだ。そしていたら、かぁちゃんととうちゃんが子どもら案じて、あまり泣いではぁ、眼(まなぐ)あまり泣きはれではぁ、二人では六部になって、そして鉦(かね)を叩いて尋ねて行ったど。とうちゃんとかぁちゃん…。
「オサイとヨウジがいたならば、なんでこの鉦叩こうば…」
 て、そうして鉦叩いて尋ねて行って、そうしてその大きな家の門の前さ行ったら、聞きつけて、妹は子ども背負って遊んでいた。そしたら、かぁちゃんととうちゃんであった。そして姉ちゃんを呼ばった。したら、
「かぁちゃんだか」
 て。妹の方はたぐづいた。目は開かなかったど。そうすっど、姉の方で、
「とうちゃんか」
 て、たぐついたら、パッと目開いた。そしたらかぁちゃんがくやしくて、モグラモチになって這って行ってしまったど。とうちゃんはやっぱり坪掃除したり、畑掃除などしたり、三人で一生暮したど。いまいるモグラモチも、かぁちゃんがなったのだど。とーびったり。
(男鹿てつの)
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