49  糖福と米福 

ここのようなとこに生っじゃ子どもが、糠福と名付けたど。そうすっじど、お母さんが死んで、後妻おっかさもらいやったど。そうしてそこさ子ども生まっだなを、米福と名付けて、「糠福・米福」て可愛がって、最初のうちはな、いたわけだど。そして仲よく、「姉ちゃ、姉ちゃ」といでやったど。そしてだんだんと大きくなってみたところぁそのおっかさが、やっぱり自分のがめんごくてな、最初の糠福のどこ、遅めんこいわけだけど。そしてはぁ、
「栗拾いに行ってこい、お前だ栗拾ってこい、二人で」
「はい」
 て、栗拾いに出かけて、大きな袋一つずつあずけらっでよ、そして栗山さ行って、一生懸命に栗拾いして、姉ちゃの方、糠福がなんぼ拾っても溜んねごんだじも。そして米福なは溜って、そして米福は、
「いっぱいに袋さ、いっぱいになったぜはぁ、姉ちゃ行がねがはぁ」
「あい、おれな溜んねなよ、拾ったようだげんど、なんぼ拾っても、袋さ一つになんねから、おれ行がねから、お前行ってろ」
「なしてだべな、姉ちゃ、おれ拾って助(す)けっから」
 て、そして拾って助けて居っけんども、なんぼ拾っても溜んね。米福もはぁ、妹ぁちっちゃいもんだから、
「おれ、ほんでは行ってっから、姉ちゃ、じきに来いよ」
 なて、言うて行った。姉ちゃが一生懸命に拾って、溜んねもんだから、難儀して歩(あ)いっだべ、そして歩って拾っているうちに、大きな沼端さ行ったけど。そして、大きな沼端さ行ったところが、疲れたもんだから、そこさ尻ついて休んでだところが、居眠りして眠(ねぶ)ってしまった。そしてちょいと目覚めてみたれば、その沼の水ぁ、ダブダブ、ダブダブとゆれて来たげんども、その娘、そこにいたれば沼の岸の方から、蛇体が出はって来て、
「おら、家さ帰ったたて、どうせ、米福めんごがらっで、おれめんごがらんねなだから、この蛇体に取って食(か)っじゃてええ。おら行かね、ここにいる」
 て、そこにいたど。じっとしていたところぁ、だんだん蛇体がきれいになってはぁ、おっかさんになって、そして蛇体でなくなって、
「お前が栗拾いに来たな、栗溜んねべ、袋の底さ孔あいていんのだから、こっちのええ袋呉れっから、こいつさ一杯拾って行け。おれも拾って助(す)けっから」
 て、そして拾って助けらっではぁ、袋一つ拾って、「家さ帰れよ」て。帰っじゃぐなかったげんども、また蛇体になって入って行ったそうだ。入って行ったもんだから、栗も拾ったんだし、戻って来たわけだ。そして来たら、おっかさ、
「米福など、さっきだなに帰って来たのに、糠福、何してっこど。なまけて遊んでばりいて…」
 て、うんとおんつぁっで、そして、いつそうむごさい目にばっかり会ってよ、糠福は。んだげんども我慢して勤めて、「おっかさ、おっかさ」て勤めているうちに、ええどっから貰いに来たけど。
「糠福、呉っでおくやい」
「糠福でないべ、米福だべ」
 てだど。おっかさはな…。
「ほんでねぇ、糠福だ」
「糠福でないべ、米福だべ。間違ったでないか」
 おっかさ、何べんも言うごんだど。
「いや、間違わね。糠福だから、着物など何にも持たねてもええから、身成(なり)ばり呉っでおくやい」
 そして糠福はもらわっで行くことになった。そして米福はいっぱい着物など買ってもらっては、持てだげんど、糠福は買ってもらわんねで、持たねなだ。
「姉ちゃ、おれの着て行け、おれの着て行け」
 て言うて、米福の一通りもらって着て、ええどこさもらわっで行った。
 米福がもらわんねもんだから、おっかさどこさ泣き泣き、たぐさって、おっかさ、せめて米福もらわんねから、仕様ないべげんど、糠福はええどこさ貰わっじゃんだごて。んだから、みんな同じに育でっこんだ。そういうことするもんでない。むかしとーびったり。
(佃 すゑ)
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