47 おぶさろうの化物 ― とっつくひっつく ― 

 むかし、あるところに、大きな川があって、三人の子どもら、夜、カジカすくいに出はったど。そいつに、一番大きい兄(あ)んちゃ、太郎ぁ行ったど。そしたらよっぽど行ったら、河童渕さ行ったとき、大そう眼(まなぐ)の光る化物出た。
「太郎や、おぶさっだい。太郎や、おぶさっだい」
 そうすっど、恐かない、恐かないではぁ、ワラワラ兄(あ)んじゃ逃げて行った。こんど次郎は、
「そんじゃ、おれ行ってみる」
 て言うて行った。やっぱりそこさ行ったら、眼(まなく)の光る大きな化物出はって、
「次郎や、おぶさっだい。次郎や、おぶさっだい」
 て。これも恐かなくて、網投げて逃げてきた。そして、一番小さい三郎ぁ、
「兄さんたちは弱いもんだ、ほんじゃおれぁ化物おぶってくる」
「いやいや、お前なの行ったら、化物食れるから行かんね」
 て、おかちゃんととうちゃんが言うた。
「いやいや、おれぁ、化物背負ってくる」
 そして行ったら、やっぱりそこさ行ったら出てきたわけだな。そして、
「おぶさっじゃいから、おぼれ」
 て、背中突出(つだ)した。そしたらその化物、川をこいで来て、背負(おば)ったら重だくて重だくて、その、やっと家まで歩いてきた。そして家さ来て、
「かぁちゃん、かぁちゃん、化けもの背負って来たから、早く戸を開けて呉ろ」
「化物、おぶて来た」
 なて、魂消てみな戸開けながったど。
「早く、重たくて、おぶっていらんねがら、戸開けて…」
 そして戸開けたら、入って来て、
「ほら、化物」
 て、ドサンとおろしたら、そしたらみな黄金になって、ジャクジャク、ジャクジャクと小判になったど。荒い者にはかなわねど。とーびったり。
(男鹿てつの)
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