38 桃太郎 

 むかしあったけど。ここのようなどこに、じじとばばいたけど。そしてじじは山さ柴刈りに、ばばは川さ洗濯に行ったけど。
 そして一生懸命に洗濯しったれば、川上の方から、赤い桃と青い桃と流っで来たけど。
「赤い桃、こっちゃこい、青い桃そっちゃ行げ」
 て、カッポカッポ、カッポカッポと。ばば、したれば赤い桃ぁプンクプンク、プンクプンクと、こっちゃ来たけじし、青い桃ぁアーンアンて泣き泣き、そっちゃ流っで行ったけど。そしてはぁ、ばば拾ってきてはぁ、家さ持って来てしまって置いて、 「晩げ、じじぁ帰ってきたらば、分けて食うべぁ」
 て戸棚さ入っでしまってで、そしたればじじは山からいっぱい柴背負って帰ってきたれば、
「じじ、じじ、おれ今日洗濯に行ったれば、赤い桃拾って来たぜ、晩げ分けて食うべなぁ」
「ええがんべなぁ、ほんじゃ、夜わり終してから食うべなぁ」
 て、そして夜わり終してから俎板と庖丁もってきて、俎板の上さあけて、パカーッと割ったれば、中からめんこい男のおぼこぁ、オギャーて生まっだけど。桃から生っだから桃太郎と名付けろはぁて、桃太郎と名付けたど。そうして、それめんごがって、赤い御飯炊いて赤い魚(とと)買ってはぁ、いっぱい食せてはぁ、大きくなったけど。そして桃太郎、桃太郎てめんごがって、じじとばば、おがして、大きくなったれば、
「おれぁ、じじ、じじ、鬼ガ島さ鬼退治に行ってくるから、キビダンゴ拵えて呉ろ」  て言うたけど。ばば一生懸命でキビダンゴを、トンカパンカ、トンカパンカと臼ではたいて、そして粉拵えて、いっぱいうまく丸めて呉っで、それを袋さ入っで、腰さ下げて、そして鬼ガ島さ出かけたけど。
 だんだん行ったれば、向うの方から犬ぁワンワン、ワンワンて来てはぁ、桃太郎の前さチョコンと来てはぁ、
「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさござる」
「おれは鬼ガ島さ、鬼退治に行ぐ」
「おれもお伴をしっから、お腰さ下げっだもの何でござる」
「これは日本一のキビダンゴ、一つ食えばうまいもの、二つ食えば苦いもの、三つ食えば辛いもの」
「ほんでは、わたしに一つ下さい。お伴すっから」
「んだら、一つあげっから」
 て、もらって食ったれば、いやそのうまいこと、うまいこと。
 また、だんだんと行ったれば、こんどは向うから、猿、キャンキャン、キャンキャンて来たけど。
「桃太郎さん、桃太郎さん、どこさござる」
「おれは鬼ガ島さ、鬼退治に行く」
「お腰に下げたもの、何でござる」
「日本一のキビダンゴ、一つ食えばうまいもの、二つ食えば苦いもの、三つ食えば辛いもの」
「一つ下さい。お伴しっから」
 そして、一つもらって食って、うまいことうまいこと、まず、そしてだんだんと行ったれば、大きな門作ってはぁ、あったけど。そこに錠かかっていたもんだから、開けらんねから、キジの鳥ぁぶーんと飛んで行って、陰さ行って、錠あけて、そしたら青鬼に赤鬼いたけど。そうすっど桃太郎、恐れないで、なんぼ荒いんもんだか、 「お前の首をもらいに来た。首をもらいに来たとこだから、尋常に勝負しっから首をもらって行かんなね」
「桃太郎さん、桃太郎さん、生命ばり助けておくやい。何でもええもの、宝物いっぱいあげ申すから、生命ばりは助けて呉ろ」
 て言うてはぁ、
「ほんじゃら、宝物、みな出せ」
 そうすっどいっぱい、サンゴだ、打出の小槌だ、金銀サンゴ綾錦いっぱい車一つ積んで、そしてはぁ、鬼退治してはぁ、キジは綱率いて、犬は車を引張って、お猿は後押しして、帰ってきたど。そうすっど、じじとばば喜んで、家の前さ出て待ちてて、そして、
「じじ、じじ、今帰ってきた」「桃太郎、あらいな」
 て、うんと喜ばっじゃけど。むかしとーびったり。
(佃 すゑ)
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