25 広河原の猫股 

 猫とおばぁさんだけ残して、御祝儀さ招(よば)っで行ったど。そしておばぁさんが、
「猫、猫、退屈でないか」
て言うたれば、そしたれば、
「唄うたって聞かせっから」
 て、猫唄うたったって。そして唄うたったり、手拭かぶって踊りおどったって。
「んだげんども、おばぁさん、決して人さ話さないで、おれぁそのこと人さ話教えられっど、こさ居らんねから…」
 やっぱり、ばばも気味わるいから人さ話したれば、センノウ沢という沢あんのよ、向いに。そこさ行って猫股になって、そして一年に一ぺんは猫の鳴声聞かせるど。
(大石きみよ)
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