22 食わず女房 

 むかしあったけど。
 ある雨の降る晩げ、スタスタ、スタスタと来て、そして大変にええオカタいだどこだけな。そして、
「おれどこ、嫁にしておくやい」
 て言うごんだから、そいつを、まず嫁にして、いやなんなもんだか、飯(まんま)のいっこと米のいっこど、ちっとさっと米要っことでないけど。おかしいこともあるもんだ、このように米要っこどざぁないもんだて、その一人者ぁ二階さ上がって見ったれば、いやまず朝げ、その女、ヤキメシ仰山握って、見ったれば髪をこう上げだれば、そこから大きな口あったどこ、ヤキメシいっぱい入って、知しゃねふりして、 「おれ、ゆんべな、夢見たもんだけな。何なもんなんだか、ヤキメシいっぱい握って、そして頭の中さ入れる者ぁいた夢見たもんだけな」
 て言うど、赤くなり黒くなりして、鬼になって逃げて行ったけど。やっぱり一人者ざぁ馬鹿にされるもんだど。とーびったり。
(大石きみよ)
>>中津川昔話集(上) 目次へ