99 渡辺綱

 一に頼光、二に渡辺、三に貞光、四に宝生なて、六人の山伏になって、大江山さ鬼退治に行ったど。そんどき、鬼のかいな持ってきて、そしてしまって置いたど。そしたら鬼はおば御に化けて来て、「鬼の腕とってきたて言うから、見せてもらいたい」
て来たずも、そして出して見せたれば、「珍らしいもんだ」て見て行ったど。そして「ついだものか」て自分の腕さ継いだって。そして、「これこそ、おれの腕だ」て、
上破風から飛んで行ったど。んだから上破風はあげんななて言うて、年寄衆から聞いてきたな。渡辺という家では上破風はあげねな。
(男鹿てつの)
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