92 屁たれ嫁

 あるところでな、嫁もらって、姉、姉て言うたもんだどな。そしたれば大した青くなって、どこか悪くて青くなったもんだから、
「なえだ、姉、姉、どこか悪れか」
 て言うたれば、
「おれ、どこも悪れなないげんど、屁たまっじど、こういうなんなだ」
 て、言うて、そして、
「んじゃらば、屁などたってみろ」
 て言うもんだから、
「ほんじゃ、アテギブチ押えておくやいな」
 て、ぐらっと尻、したぐって、たっだれば、じじとばばは、お恵比須棚さ吹っ飛ばさっだど。そしてはぁ、そんな屁たれ女、置かんねて言わっで、出さって、ずっと行ったれば、子どもら、梨もぎしったけって…。
「そんなの、おれ、屁でもいで呉れんべ」
 て言うて、
「屁でもがれるもんで、あんまえちゃえ」
「ようし、おれ、もいでくれる」
 て、ぐらっと尻ひったぐっで、ブウーてたっだれば、梨ぁバラバラ、バラバラて落ちで来たごんだけな。そして、梨をもいで、そんな時、飯豊山さ登る導者大勢来たもんだから、
「あんなの、おれぁ屁で吹っ飛ばしてみせっから…」
 どかて、屁たっじゃれば、ドドドド、ドドドドとさっでじゃっけぁ、スウーと引くと、ドドドド、ドドと、こっちゃ来たけど。そしてそいつ見でて、大した金持ちの家の人ぁ、倉の番に頼むかなぁて、倉の番さ頼まっじゃけど。そうしてこんどは倉さ寝でで、
「誰じゃ、誰じゃ」
 て、いつでも屁たっでいで、泥棒よけになったけど。泥棒が入って来っかと思うと、「誰じゃ、誰じゃ」て屁たっでいたっけど。とーびったり。

(大石きみよ)
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