89 南の山の馬鹿聟・団子聟

 南の山のおんつぁ嫁とって、そして嫁の家元さ行ったれば、団子のうまいな御馳走しておぐやったけど。そしてその団子がうまくてうまくて、
「なえだて、おれも行って拵ってもらって食だいもんだな」
 なて、その、「何ていう名前なもんだ」て聞いたら、「団子て言うのだ」
「ほんじゃ、おれも行って、おっかに拵ってもらって食うべ」
 て、忘せっど悪いから、ダンゴダンゴ、ダンゴダンゴて来たど。そして大きな川あるもんだから、「ドッコイ」て、のっ越えたらば、ダンゴ忘せではぁ、ドッコイドッコイ、ドッコイて来たど。そして、「今来た」「何御馳走あっけ」て言うたら、「ドッコイなて言うことは聞いたことないな」「んだて、ドッコイざぁよっぽどうまいもんだけがら、拵って呉んないが」
「おら、ドッコイなて言うもの知しゃねな」
「んだて、ドッコイていうもんだけから、拵って呉ろ」
 て、カギさ手(た)ぐついて、グルグル、グルグルと廻っているうちに、カギはパインとおっかの額(ひたい)さぶっつがって、
「いや、痛いこと痛いこと、まず団子のようなコブぁ出きた」
「その団子のごんだ」て言うたけど。
(大石きみよ)
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