80 山鳥むかし

 むかしあったけど。
 山鳥飛んで来たな、おじいさんが道よけに出はって、山鳥とって、そして、
「ばば、ばば、これ山鳥とったから、煮ておけ」
 て、毛引いてやったどこだっけな。そしてばば、毛引いて煮て食見したら、いやうまいこと、うまいこと、塩っぱいがては食い、甘いがては食いして、すっかり食ってしまったど。
「これは困ったもんだほに、おじいさん来ないうちに食ってしまっては困ったもんだ」
 て、仕様ないからて、自分の尻を切っては、そして煮て、知しゃねふりしてだば、じじぁ来て、「ばば、ばば、山鳥煮たか」「煮た」て、ばば寝っだどこだけな。そして、「ばばも食え」て言うたら、
「おれぁ、何だか腹痛(や)めて食んね」
 て、そしてはぁ、じじ食ってみたれば、
「いや、しないこと、しないこと、何(ない)だなごんだ。ばさま、しないこと」
 て言うたば、
「古いなでもあんべ」
 なて、いだったげんど、家の前の杉の木さ烏来て、
カァカァ しないもくさいも道理がな
ばばお尻の片われだ
 て語ったどこだど。そしたれば、ばば、「ホーホー」て追うげんど、また、
カァカァ しないもくさいも道理がな
ばばお尻だも
 て、烏ぁ言うたって、そしてはぁじじは、「何だべ、このばばぁ、ほに」て、尻(し)たぐったれば、ばば、血だら真赤になって寝っだけど。とーびったり。
(大石きみよ)
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