77 篩借り

 朝早く、ばばが座敷を掃いっだんだど。そしたら豆が一つコロコロと出てきたど。
それを大した大きな豆であったもんだから、それを拾ってきて、そしてまず寝てるじじを起して、そして一粒の豆を半分にして、
「半分を種子、半分は黄粉にすべぇ」
 て言う相談したどな。そしてその半分のものをカランカランと煎って、臼に入れてはたいたんだど。そしてそろそろ粉になる頃になったら、篩がないど、
「隣のうちさ行って借っでくっかなぁ」
 て言うたら、
「いや、隣の家さ聞えっど、なめられっど困っから駄目だ、んじゃ、じじ褌の端でふるけ」
 て言うわけで、じじは褌をはずして、それでふるってだんだど。そしたらそのうちに、そこらの次郎太郎どもが来たんだどな。来るとき喋ってくる音が聞えたんだな。
セイガキ コガキ
道ノハタノコンモン草
 て言うて来たど。そう言うて来る音したもんだから、
「次郎太郎が来たぞ。黄粉みななめられっから、早く何とかしろ」
 て言うたら、じじは慌てて裸の尻でかくしたんだど。そしてるうちに屁が出て来たど。そして我慢してるうちに屁が出て来たど。そして我慢してるうちに一発やったもんだから、黄粉がみな飛んで行って、向い山の笹の葉っぱさみな喰付いたんだど。そしたら遊びにきた次郎太郎どもが、そこさ行って、「そら黄粉だ」て言ってなめてる。じじも負けたくないもんだから、裸で走って行って、なめているうちに、笹の葉っぱでキンタマを切って落してしまったど。そしたら餓鬼どもがそのタマを拾って、
「鶏の卵拾った、これもって行って鶏に抱かせっかな」
 なて言うて持って行って、家の卵と一緒に抱かせっだど。そうしているうちに、何日か経(た)って雛にかえったら、普通の卵からむいた鶏は「コケコッコー」て啼くんだげんども、じじのキンタマからむいた鶏は「フンヌケ、フー」て啼いたんだど。とーびったり釜の蓋、さんすけ。さんすけ頭(かしら)に火がはねて、ごん助たのんでやっと消し申した。
(井上元一)
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