67 猿地蔵

 むかしあったけど。
 じじぁ行って一生懸命で畑をして、あんまり畑うないして、こわいもんだから、寝っだれば、猿ぁ来て、
「あららら、おらえの辺りの地蔵さま、こんなどこさ来て、寝っだどれ」
 て、そしてこんどぁ、川向いなもんだから猿どもはぁ、かついで川越し、そしたれば、じじぁ屁むぐしたずも。そしたば、「鳴ったはなんだ」「時の太鼓」。そしてこんど降りて来たらば、「下がったはなんだ」「延命こん袋」て、そしてじじをかついで来て、建て申して、いっぱい御馳走あげてはぁ、猿どもぁ拝(おが)申して行ったどこだど。そうしてその宝物から、さまざまうまいものもらって来て、家さ置いっだらば、隣のばば来て、
「火呉(く)ろ」
 て来たもんだけど。
「あらら、なんだべ、こっちの家のさまざまなもの、宝物か、何なもんだべ」
 て言うもんだから、こういうごんで、じじ畑さ行って寝っだれば、猿どもぁ来て、
そうして川越して地蔵さまと間違わっではぁ、建ててそさ御馳走あげて行ったもんだから、じじぁもらって来たどて。
「ほう、したりしたり、おらえのじじぁ灰(あく)まらばりはじってて、さっぱりその気ぁないもんだから、おらえのじじもやってみんべ」
 て、じじどこ、同じに川向いさじじ行って寝っだれば、猿どもぁ来て、
「ああ、またこがえなどこさ地蔵さま出っだでこ、また川越してあっちゃ建て申さんなね」
 て、そしてこんど、じさまかついで川越したら、また同じに屁むぐしたらば、「鳴ったは何だ」「時の太鼓」。そして来てはぁ、「さがったは何だ」「延命こん袋」て言うたもんだから、じじは可笑しくて笑ったど。
「いやいや、これぁにせものだ、地蔵さまでなかったでこ」
 て、川さザボンと投げらっでしまったけど。んだから人の真似てさんねもんだけど。とーびったり。
(大石きみよ)
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