63 金の化けもの

 むかし、こげなどこに大きな家あったってよ。そこに化けての出っこんだど。夜、夜中になっど、白い顔面(つら)したものに、赤い顔面したものに、出っこんだど。
「そいつ、何だか見やらかしに、行って来い、お前行って来い」
 と言うげんども、行かんねわけだ、誰もな。そしてある荒い人だべ、
「ほんじゃ、おれ行って泊って、見やらかして来る、今晩」
 て行ったけど。そして行って泊ったけど。そしてはぁ、座敷さ寝せてもらい申した。そしたれば、「何にも出ねどれなぁ」と思ってな、いたれば、二時か三時頃になったれば、すうっと戸を開けるど。そして、
「さぁ、これ、このことかな」
 ていたれば、白い顔面したの出てきた、恐っないけって言うけども、寝っだってよ。そして寝てるうちに夜明けた。
 また、「今晩も一晩泊ってみんべ」と思って泊った。そしてその晩また二時か三時頃の夜更ける頃になったれば、またすうっと戸開ける音する。「またこれなぁ」と思っていたらば、赤い顔面したものが出てきた。何にもしないで蒲団かぶっと知しゃね振りして寝て夜明かしてしまった。そして、これは変なもんだなと思って、次の日、家から立たないで、そして誰もいなくなったとき、戸の陰さ行って、賢い人であったべ、板尻をはがして、そして掘ってみたど。そしてみたところが大きなカメなんぞ埋まって、中さ、銅銭がいっぱい入って、そしてもう一つ大きいカメあって、それさ銀貨がいっぱい入ってなぁ、あったけど。そういう風にあったもんだから、その人はそれを宝ものにした。荒い人には敵わねもんだ。度胸のええ人には敵わねもんだど。化けものなんざぁ、そういうもんだど。むかしどーびったり。
(佃 すゑ)
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