61 地蔵浄土

 むかし、ここのようなどこに、じじとばばいだっけど。冬の寒くなった時、粉をはたいて団子を拵えて、うまく団子拵えてはぁ、じじとばば、夕飯に食ったど。そしたば一つあまったけど。
「あまった、じじ食え」
「おれ、たくさんだ、ばば食え」
 じじ食え、ばば食えているうちにはぁ、コロコロと囲炉裡(ゆるり)の隅(すま)こさ落してやったど。そしたばそいつぁ、そこの穴からコロコロと縁の下さ入って行ってしまった。むかしの人なもんだから…。
「もったいない、一つ団子落していらんね」
と。
「その団子さ追かけて行かんなね」
 て、縁の下さ、ずっと追かけて行った。そして行ったれば、地蔵さま立っていたけな、
「地蔵さま、地蔵さま、いま団子転んで来ながったべか」
 て言うど、
「ああ、転んで来たげんども、おれ、もったいないと思って拾って食ってしまったはぁ」
 てな。
「そのお礼に、おれ、すっから、お前ここさ泊れ」
 とな。
「明日の朝早く、夜明けないうちに、鬼どもぁ来て、博奕うちすっから、そん時に、二階さそっと隠っでで、そうしてはぁ、鶏の真似しろ」
 とな。そう教えらっで、そこさ泊ってで、早く鬼共ぁ来て、一生懸命で博奕、
デッチ十六 カマカイボウ
清水をさせば 抜けるとき
 て、博奕ぶちだじもなぁ。そしてはぁ、
「あら、大抵一番鶏鳴いてもええなぁ」
 て、打扇でパタパタ、パタパとして「コケコッコー」
「ほら、一番鶏鳴いたぞ、ほら、みんな早くしろよ」
 よっぽど経(もよ)って、また打扇でパタパタ、パタパタしては、「コケコッコー」
「ほら、二番鶏鳴いたぞ、早くみんな一生懸命でしろよ」
 そして一生懸命で博奕打ちだけざぁ、また時間、ちょうどええく来た頃に、またまた、「パタパタ、パタパタ、コケコッコー」
「ほら三番鶏ぁ鳴いた、夜明ける、みんな帰れ」
 てはぁ、ここさいっぱい銭出しったのはぁ、鬼どもなもんだから、しまわねで、ガラガラ行ってしまったど。
 そうしていっど、地蔵さま、
「ほら、お前、銭を皆持って、そして帰って行け」
 と言わっで、その銭ぺろっとさらって、帰って来たど。んだから、食いものざぁ大事にして、そういう風にしてどこまでも追かけて行っても何してもお粗末にしないようにして、地蔵さま拾って食って呉っじゃもんだからええがった。そのお礼に銭いっぱいもらって帰って来たなだけど。むかしとーびったり。
(佃 すゑ)
>>中津川昔話集(下) 目次へ