大黒さま

 お大黒さまというのは、決して上を見ない人だそうだもな。大きな頭巾かぶっ
て、一生けんめい働くことばかり考えてたもんだど。そうすっど、みんなから妬(しよ)ね
まっで、ある集会で餅搗いて食ったときだそうだ。そん時、お大黒さまは砂糖餅
大好きで食ったのさ、隣の人は、
「いや、いまっとオダチすろ」
こんどこっちの人も、「いまちっとオダチすろ」て、みな組んで、そうしてさんざ
んに食せだそうだもな。そうすど、こんどは目、暗くなるみたいな気持になった
そうだもな。そして家さやっと来るようにして来たところぁ、途中である女の人
が川端で大根洗いしていたど。そうしたところぁ、
「大根ゆずって呉れねえか」
 て言うたところだど。大根おろし食(く)だくてな。そしたところぁ、
「奥さま、勘定しったべもな」
 こう、女の人ぁ言うたど。そうすっど、
「いや、ほんじゃ、仕様ない」
 て言うたものの、女中が股大根見つけだずもな。
「こいつは二本に勘定しておかねぇべから」
 て、半分切って、お大黒さまさ呉れたそうだ。その大根で助かった、餅食いす
ぎて。んだからお大黒さまさは股大根上げるんだど。どんびんと。
(佐藤七右衛門)
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