桃太郎

 むかし、じいさん、ばぁさんいだったど。して、そのおじいさん、山さ柴刈り
に、おばぁさんが川さ洗濯に行ったら、向うから大きい桃流っで来たど。ツップ
カップ、ツップカップと流っで来たど。よっく見たら二つ流っで来たんだど。
 赤い桃 こっちゃこい
 白い桃 そっちゃ行け
 て、そして赤い桃拾ってきたけど。そして赤い桃、家さもってきて、
「じんつぁ帰ってくるまで、ここさ上げておいて、山さ行ったから帰ってくるま
で」
 て思っていたら、おじいさん帰って来て、
「赤い桃拾って来たから、割って御馳走になっか」
 なて、マナイタもってきて、割ったば、中から男の子出てきたてよ。ほして、
じいさんばぁさん、
「いや、桃から生まっできたんだから、桃太郎て名付けんべ」
 て。そいつ、めんごくてめんごくて、おがしたんだど。だんだん大きくなって
力持ちになったど。ある時、
「じいちゃん、ばあちゃん鬼が島さ鬼退治に行ってくっから、やっておくやい」
 て言うたど。
「まだ、お前危ないから、そんがえなどこさ行かんね」
 て言うたげんども、聞かねで行くて言うから、
「ほんじゃ、キビ団子こしゃえで呉(け)っから」
 て、じじちゃとばばちゃと、キビ団子こしゃえたど。ほして一生けんめい、そ
いつこしゃって呉て、出かけたど。
 そこさ猿来て、
「桃太郎さん、おれどこも家来にして呉ろ」
 て言うたど。したら、キビ団子一つ呉で、家来になったど。こんど行ったら、
犬来たど。犬にもまた「桃太郎さん、桃太郎さん」て言わっで、「お前も家来になっ
か」て言うたら、「なる」て言うて、そいつさも一つ呉たど。
 そのうちにキジ飛んできて、キジも、
「桃太郎さん、あたしに一つ下さい」
 て言うど、そさも一つ呉て、こんど、みな連れ立って、鬼が島さ行って、鬼が
島さ行ったら、青鬼が門番しったの倒してのりこんで、みんなで一生けんめい戦っ
たら、猿は青鬼の上さあがって、かっちゃいだり、キジは突っついて、犬ぁかぶ
ついて、とうとう勝ったんだど。そして宝物みな分捕って家さ帰って来たんだど。
そしてじいさん、ばあさん、安泰になったんだど。どーびんと。   
(平井とよ)
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