かちかち山

 むかしあったけど。
 おじいさんが豆蒔きに行ったんだな。豆蒔いっだら、狸出てきて、おじいさん
蒔いっだら、
  一粒まいたら くっされろ
  二粒まいたら くっされろ
 て、石さ尻かけているもんだから、ごっしゃいで、おじいさん、鍬持(たが)って追っ
かけっど、逃げてよ、次の日、そこさモッチ置いたど。石の上によ。そしたら次
の日また来て、馬鹿にしてるもんだからよ、追っかけたら、狸は尻喰っつがって
動がんねぐなってよ、生捕りして、家さ来て下げっだど。そしておばぁさんに、
「決して狸の縄とくなよ」
 て、また畑さ行ったんだごでな。
 こんど、おばぁさん、粉叩(はた)きしったど。そしたら、
「おばぁちゃん、おれ代ってやっから、解いて呉ろ」
 て、あんまり言うもんだから、解いて呉(け)だら、おばぁさんどこ杵で殺してしまっ
たんだもな。そしてあばぁさん料理してしまったんだど。そして夜、おじいさん
帰ってきたら、「狸は?」て言うたら、
「おじいさん、疲っで来(く)んべから、料理して待ってたから、」
 て、おばぁさんのそれ食せだど。そしてこんど、
「おじいさん、うまいがったべ」
 て言うたら、夜になって、
「ばば肉、しないも道理、流しの下の骨から見ろ」
 て、逃げて行ったど。そんで外さ出てみたら、流しの下さおばぁちゃんの骨カ
ラばりあったど。おじいちゃん泣いっだどこさ兎が来たど。
「なして、おじいちゃん泣いっだんだ」
 て言うたら、
「こういうわけで、おばぁちゃん殺さっだ」
 て言うたんだど。
「ほんじゃら、おれ仇とって呉っから……」
 て、狸のどこ、「薪とりあえべ」て言うて、薪とって兎がうしろになって、狸の
背中さマッチで火つけたど。
「何だか、上の方でボウボウていうの、何だ」
「ボウボウ山のボウボウ鳥だ」
 そのうち、「アチチチ……」て、背中一面火傷したど。そしたら兎逃げて行って、
こんど膏薬売りに来たど。そしたらその膏薬、南蛮粉いっぱいつけた膏薬で、
「火傷(やけぱた)に効く膏薬」
 て行ったもんだから、狸そいつ買ってつけたもんだから、痛くて痛くて跳ね上
がって苦しんだど。それから今度、舟のりに誘ったんだど。
「何で舟拵(こしゃ)う」て言うたら、
「土で一生けんめいになって、こういう風にして拵うどええ」
 て教えらっじゃど。そして土舟拵って、兎は木の舟拵って、舟のりに行ったん
だど。そして行ってるうちに、狸の舟は土だから、少しとろけかかったど。そし
たら、その土舟突っついて、沈んで死んでしまったど。そんでおばぁちゃんの仇
とって呉だんだど。どーびんと。
(平井とよ)
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