34 感興庵の藤兵衛狐と方領塚のびっこ狐

 米沢の東寺町の感興庵の狐と窪田の楯のびっこ狐は仲よかったそうだ。そして、
「何かうまいことないかい」
 て話したそうだ。
「何かうまいことありそうなごんだ」
 そうすっど、楯の稲荷は、
「この間、旦那衆でよ、明日馬とっかえる話しったけ。明日、んだら、今夜行っ て、おれは馬になっから、お前は馬喰になって行ったらええ、んねがい。御馳走 になれるし、金になるし」
 なて相談したってな。ほして明日行ぐっていう馬喰の話聞いっだな、にわかに 夜出かけたわけだ。
「明日、都合悪れから、今日、馬ひいてきた」
 なて行ったそうだな。そうすっど旦那見っだけ、
「こりゃ申し分のない馬だ。これだらええ」
 ていうわけで、とんな御馳走してよ、商いになったそうだ。そうすっど片方の 感興庵の稲荷が馬喰になって、たんと御馳走になってるわけだ。馬になったのは、 御馳走ないじも。早く夜明ければええと待っていたそうだ。そしてこんど馬喰、 御馳走になって帰って行った後さ、わらわら行ったど。楯の稲荷は。そして、
「なんだ、お前ばり御馳走になって、おれはひどかった。分け前の銭よこせ」
「何語ってる。銭などもらっていない」
 なて、二人で喧嘩したど。
「なんだって、おれば馬にして御馳走なって」
「そんなことしないぞ、おれは御馳走なんねぞ、銭などもらって来(こ)ない」
 なて喧嘩して、負けてびっこになったってな。
(小関清輝)
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