31 牡丹に唐獅子-法話-

 いま、日本の国民の思想が昔のようにいろいろに、まとまりがなく、おのおの 自分自分の主義主張をしている。それで国が満足すっかというと、なかなか。大 杉栄だの、何派だのていうことで、危険思想がたくさん出ているんだ。そういう ことがつまり、「獅子身中の虫」ということだ。
 獅子大王が百獣の王だって、獅子大王が何ものにも負けないでいられっかと言 うと、やっぱりこいつも、獅子身中の虫て、獅子自体から、ちっちゃこい細かい 虫が湧き出るもんだ。その獅子が自分の身から出た錆ということあっけんども、 自分の身から出た虫のために、うんと苦しがって、その苦しいどこをどこで治す かというと、むかしは昔は暑い国のもんで牡丹があった。その牡丹の花の下さ行 くじど、牡丹の花の匂いが、獅子の虫がその牡丹の匂いのために身から抜け出て 行くんだ。それで身を守るがために、獅子大王は牡丹の花の下さ行って虫をよけ るもんだど。それが「牡丹に唐獅子」のいわれだど。
(斎藤捷太郎)
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