3 猿と蛙の寄合餅

 あるところに、猿と蛙ぁいだ。ほうすっど猿という奴は猿賢いもんだ。蛙 びっき は何 も人は言うど、「ほうが」なて聞いてくるもんだから、こんど猿は、
「百姓ぁ鎮守さまのお祭り、明日あっから、餅搗く」
 餅とって食って呉っじゃくて仕様ないもんだから、そんで味付けたずも。
「びっき、びっき」
「ああ」
「あの、明日、鎮守さまのお祭りで餅搗くから、お前、おぼこの真似して川さ入 れ。そして上がって来て、おれは臼背負って裏山さがらがら上がって、天ぺんど さ上がって待っていっから、そこさ来い」
「ほうか」なて、蛙は。
 朝げになった。ほうすっど蛙はまず餅搗きの音すっずま。
「始まったな」
 て、オギャエ、オギャエ、オギャエなて、おぼこの真似して川さ入った。ほう したら家の人は、
「ほら、おぼこ川さ入った」
 なていうわけで、わらわら餅搗きやめて来たわけよ。見てもおぼこいないわけ よ。
「なえだ、蛙の畜生、畜生、わるい畜生だ」
 なて、石などぶっつけらっで、沈んだり浮きたりして命からがら上にあがった。 猿は、がらり臼なのかつねて、ガラガラ裏山さ上がって行ったわけだな。猿はや たらに柴でも何でも、パッパッパッと、猿なもんだから行ったわけだ。餅落ちだ のも知しゃねで、天上さ行って、ストンと臼降(お)ろしてみたら一つもない。
「ありゃ、何だ、おれぁ持ってきた筈だに、落してきたな」
 て、こんど猿はバラバラバラと降(お)ちてきた。そうすっど蛙は命からがらペタン ペタンと峯さ行ったわけだ。
 と、途中に木さなの引っ掛かって餅いっぱいあった。蛙は、
「なんだ、餅いっぱいあんな」
 と、まず食(く)い方をした。したら猿は、
「何だ、こん畜生は食(く)って来あがったな」
 ていうわけだったべ。ほうすっど「何?」なて、蛙ごしゃぇだべ。命からがら な目に会って逃げて行って、山さ上がって行ったもんだもの。そうすっど、でっ ちり餅ぁ熱いどこ押えで、ビダーッと猿の顔さぶっつけだ。熱いもんだから、猿ぁ くっついで取んねとくる。んだから、そのうちに猿の顔面、真赤になったど。猿 の顔、真赤に焼けてしまったのよ。ほんじゃから悪いこと、人を騙したりさんね んだけど。とーびんとん。
(遠藤昇)
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