-(11)餅と金-

横尾高治
 旦那衆どこで餅搗いたら、餅から金出はったていうんだね。大判・小判だったな。そしてまずお祝いすっどこだてな。そこでそいつ出てるものなり親類さ、みなお使いしたそうだ。めでたいごんだてな。そしてお祝いしたど。  ある一人の出入りの人ちゃ、使いがなかったど。
「何(なえ)だて、まず、とんな話聞いてきた」て行ったそうだ。
「何だい、大将」
「いや、これほどええぐない話ないどて、心配してきた」て、こういう話だ。
「なえだや、おら家で餅から金出はって、おめでたいて言うに、何、そいつええぐないのがい」
「いや、これほどええぐないことないなだ」
「何んで、何んで」て聞くていうのだな。なかなか語らねけぁ、
「いや、餅から金出はったて祝いしたそうだてな。これはええぐないことだ」
「なえだ、金出はっておめでたいのに、ええぐないて、何でだ」
「いや、この身成持ち金(兼ね)だ、これほど縁起ええぐないのない」
 したれば、その後ますます貧乏になって、滅んでしまったてな。
(横尾高治)
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