-(2)食わず女房-

横尾高治
 あるところに、欲たかり親父いたけそうだな。そしてその親父が何えだて言うど、やっぱり飯食(ままか)ねで稼ぐおかた欲しいなだけそうだ。 そしておかたもらったげんど、飯食せっだくなくて追(ぼ)出してやったなだけっだな。そしてその後さ来た後妻が、飯食ねで稼ぐな来たていうなだね。 「飯食ねで稼ぐなだけて、喜んでいだべちゃね」
 ところである日、親父ぁ、用達しに行って夜遅く来たれば、まだ家さ灯(あか)し点かったていうんだな。相当遅くよ。夜中によ
。 「はて、まず、灯点けて、何またしったどこだべ」て、サマ(隙間)から隙見して見たていうなだ。そしたれば、その女は握飯(やきめし)、すこだま飯炊いて握ったていうんだな。鍋の蓋さいっぱい並べっだていうなだな。そして、
「不思議なごんだ」て見っだていうんだな。したれば今度、その女は頭の髪結ったな、パランと解いで握飯(やきめし)、そさ打(ぶ)ってやんなだけそうだ。そうして親父たまげて、
「はて、飯食ねで稼ぐどて喜んでいたけぁ、こだな、こりゃ、女だ」て、恐かなくなたんだべちゃ。気味悪ぐなてねえ。そして次の日、そいつ見だはげて、まず追出してやったなだねはぁ。その親父は欲たかり親父で、飯食ねで稼ぐなていうたもんだはげて、飯食ねで稼ぐなんざぁ、こだな者(もん)だというたとえだど。
 どんびん。
(横尾高治)
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