90 てんぽ物語

 天保元年やかんの年に
 近江の湖に火がついて
 じんじぼんぼと燃えたれば
 座頭が見つけで オッチが火事ぶれ
 足なし走り 手なしもみ消した
 そのときのいでたちは
 六尺の棒をたすきにかけ
 三尺手拭杖につき
 豆腐の足駄に青竹すげて
 生畦わたって みみずのとげ
 ぶんぬくとまで刺したり


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