87 菅原道真

 むかし、菅原道真公に、親は伯大夫という人に、三人の男兄弟いでやったって。梅王丸に松王丸に桜丸。それが今度、梅王丸は道真公がどこかへ流されるとき、自分の身の危険をさとったもんだか、自分の身隠してしまったもんだど。そのとき、松王丸はこう詠んだど。桜丸は腹切って死んだのだど。
   梅はとび、桜は枯るる世の中に、何とて松のつれなかるらん
 て、そう唄よんで、自分も腹切って、死ぬなだども、その前に道真公の子ども、自分の子ども身代りにするなであったど。寺小屋さ上げるとき、松王丸の奥方は、
「一字千金、二千金、三千世界の宝の里、教える人に習う子ら」
 て、そう言って、寺小屋さ、わが子上げでであったど。そしてこんど道真公の子どもおさえて、殺されるということになった時に、その子どもを隠して、わが子を道真公の身代りにして首にして差出したど。そしてこんど、我が子もそういう風にしたもんだから、松王丸も辞世の唄のこして自分も死んであったけど。


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