66 人柱の話

 むかしあったけど。
 むかしは今とちがって、百姓衆は水に困っど、堤というもの拵えだもんだど。あるところに大きな堤こさうべと思ったども、土手つくど崩れ、つくどはぁ、崩れするごんだずもな。
「これは何か人柱でも立てなければ、駄目なのだと、おれ、人柱立てることにすっだい」
 て、そこの名主さまは、こういうたど。
「そんでは、まず、誰ば立ててええていうもんでないから、今日来った人の着物のうちで、横継ぎにつがっていた人は、人柱にすっから」
 て、名主さま、そういうたど。そうしてみんなの着物しらべだど。タッケやら、そしたば名主さまの袴さ、横つぎつがってたど。自分が言い出したもんだから、仕方なくて、名主さまがその堤の人柱になって、そしてはぁ、無事にその堤もでき上がってあったど。んだから、男の着物さは、横継ぎはつぐもんでないど。むかしとーびん。
「集成 662 長良の人柱」
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