56 爺婆と黄粉

 むかしあったけど。
 じさ、朝げ早く起きて、お庭掃いだど。大きな豆、ごろごろと転んだど。喜んで拾ったど。
「ばさ、ばさ、こんな大きな豆拾ったがら、まず半分はタネ、半分は豆の子(黄粉)にすっぜ」
 ほうしてはぁ、まずガラゴロと煎って、はたいたども、あまり貧乏であったべちゃえ、篩持たねがったど。
「はたいだども、まず篩ないし、隣の家さ行って借りれば、みち子さんが舐めだいていうし、新しい家さ行けば、千代子は舐めだいていうし、いっそのこと、おれ褌、この間買ったばっかりだし、褌のはしで、ほろぐが」
 そういうたど。そして褌のはしでふるったら、じさま屁出てきてはぁ、大きな屁、ぶーんとたれだど。その豆のこは、みなふっとんで行ったど。
 ほうして向い山の笹葉さくっついでしまったど。ほうすっどはぁ、近所の子どもは餅あぶって持って行って、
   じんじの屁の実は うまいな
   じんじの屁の実は うまいな
 て、つけて食ったけど。むかしとーびん。
「集成 388 爺婆と黄粉」
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