49 大阪の蛙と京都の蛙

 大阪にも京都にも、蛙いでだど。そして大阪の蛙は、
「何とかして、おれも京都いっぺん見たいもんだ」
 て思って出かけて行ったど。
 ピタンピタンと出かけて、峠まで行ったど。
「いや、疲れた、疲れた。腰病(や)めっから、一つ、立って…」
 て思って、立ったど。蛙の目は天頂(てっちょ)にあるもんだから、立ったもんで、うしろ見えたど。そうしたら、大てい京都見えるかと思ったのに、立った拍子に後見えたもんだから、大阪見えたど。
「なんだ、京都なんて大阪と同じや。こんなごんでは見ねぇてええ」
 その蛙はまたピタンピタンて、大阪さ帰ってしまったど。
 京都の蛙もそれと同じに山の上まで行って、
「いやいや、こわいこわい。ここからでもええから、見っかな」
 て、また立ったど。そうすっど京都見えてしまったど。
「いや、大阪も京都と同じや。こんでは見ねぇ方ええ」
 て、またそこから京都の蛙も戻ってしまってあったど。むかしとーびん。
「集成 308 京の蛙と大阪の蛙」
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