47 小倉の狐

 むかしあったけど。
 むかし、小倉の峠さ狐いっぱい住んでであったど。そして狐ども相談したど。
「小倉の太郎兵衛の婆さ、へそ臍ねぇじだから、それまず言って、御馳走食う工面すっぜぇ」
 そうしてはぁ、相談して、時のお役人に化けだど。狐ども、ほして〈今日は〉なて行ったど。
「こっちの家の婆さま、へそないちゅうごんだが、それ調べることになって来た」
 て、こういうたど。
「ほんなどこ見せねねごんだら、切ないごんだ」
 と思ってはぁ、
「まず、お役人さま、寄っておぐやれ」
 て、寄せではぁ、
「何ごちそうしたらええんだが」
 て、こういうたど。ほしたら、
「油揚げと油餅の方、ええ」
 て、こういうずも。
「はぁ、そんなことは雑作ねごっだがら、ほんでは、御馳走すっから、まず寄っておぐやれ」
 て、臍見らんね工面すんべと思ってはぁ、食いだいていうもの拵えて御馳走したど。ほうしたば、狐どもなもんだから、腹いっぱい食ったずもの。臍のこと忘せではぁ、帰ったずもの。
 ほして、小倉峠さ帰ってきて、踊り出したど。
   太郎兵衛のかがは
   へそなしかがで
   油揚げに
   油餅
   よっぱら すっぱら
   まぐらった
 てはぁ、くりかえし、くりがえし踊ってやったけど。むかしとーびん。
「集成 278 狐の立聴」
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