33 笠地蔵

 むかしあったけど。
 むかしの人ぁ、茣蓙織ったり、笠作ったりして、小国の町さ売り出して暮し立でっだもんだ。
 それ、弥蔵というおじいさんとおばぁさんがいて、おじいさんが、その茣蓙と笠売って、正月の買物して来るていうて行ったど。
 叶水の向うの子持峠というどこある。そこまで行ったら、地蔵さまが正月頃だから、みぞれに打たれて寒そうにしていたど。おじいさんが売るつもりの茣蓙を地蔵さまに着せて、売るつもりの笠をかぶせて、家さ帰った。
「ばさ、ばさ、子持峠まで行ったば、地蔵さまが寒そうにしったから、茣蓙着せて、笠かぶせてきたわ。正月の買物は何も出来なかった」
 こういうた。と、ばさま、
「ええがった、ええがった。おれたちはこうして家にいるから」二人で話して何もない年夜をしたわけだ。むかし、年夜根っこ、年取り根っこというて、割れない木をくべたものだ。その根っこで背中あぶりして、「二人でねんべ」て、寝たど。そうすっど、音きこえた。
   やんぞうの屋形 どこだべな
   エンヤラサ ドッコイショ
 て、村の若衆、何ふざげていんなだか、て二人で語っていたど。そのうちに、
「ここだ、ここだ」
 て、戸を開ける音して、ガラガラ、何か土間さ入れて行った。そして元日の朝げ起きてみたら、着物から、アキアジ(鮭)だの、いっぱい御馳走あったど。地蔵さま恩返しに来たなだなといったど。むかしとーびん。
「集成 203 笠地蔵」
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