23 ねずみ浄土(1)

 むかしあったけど。
 じんつぁとばんちゃいで、じんつぁは山さ火野(かの)うないに行ったど。一生懸命でうなってはぁ、昼飯(ちゅうはん)食って、木の根っこさ腰かけて、昼休みしったど。そしたば根っこの下の孔から、ねずみ一匹ちょろちょろと出はってきて、「ええ空だ」てそういうど。そうすっど、中から大勢のねずみが、こんど茣蓙(ござ)引っぱり出したど。そしてこんど、地蔵さま持ってきて立てたど。それからその茣蓙ひろげで、金いっぱい持ってきて干したど。ぞろりとその茣蓙の上いっぱいに。
 そうすっど、じさま、そっと根っこから降りて、その金、弁当風呂敷さ包んで家さ帰ってきたど。そうして、
「ばさ、ばさ、今日はこういうええことあった」
 て、見せっだど。そうすっど隣のばさま来て、
「なんと、お前(み)たち、こらほどのお金、なじょしてもうけやった」
「おらえのじさ、火野うないに行って、これこれで、ねずみの干したな、さらって来たど」
 て、こう言うて教えたど。
「ほんでは、おら家(え)のじさまもやんなね」
 て、家さ帰って行ってはぁ、じさまに教えたど。そうしてじさまもそこまで行ったども、火野もうなわねで、根っこの上さ休んでいたど。そうすっどやっぱりお天気なもんで、ねずみ、また出てきて、「ええ空だ」ていうど。またぞろぞろと出てきて、地蔵さま持ってきたど。そのうちに、じさま小便出てきたずも。降りてたれればええごどに、木の上からジョウジョウとたれだど。そうすっど、
「地蔵さま、地蔵さま、雨降ってきた。教えておくやい」
 て、地蔵さまは、
「雨降ってきた、雨降ってきた」
 て、教えたわけだど。そうすっど、ねずみ出てきて、みんな金しまったど。そんで、ただ帰って来たど。人の真似してもうけんべなんていうことするもんでないど。むかしとーびん。
「集成 186 鼠浄土」
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