2 狐と狸とかわうそ

 むかしあったけど。
 むかし、小国の村の衆、買いものに行くことになったど。おら家(え)のおっかちゃに隣のおっかちゃに、そのまた隣のおっかちゃに買いものに行ったど、正月の。そしてこんど、いっぱい塩魚だの塩だの、砂糖だの、いっぱい買って来なんなねもんだから、年寄衆、みな買ってきたど。子どもたちが迎えに行ったど。
「おかちゃん、ひどがったべや。こんど、おらだ代って背負うから降ろせ」
 て、その荷物てんでに背負って呉っだど。そしてこんど、
「おかちゃだ、くたびっだべがら、ゆっくり来い。おらだ行ってっから…」
 て、そう言うて、その子どもたち、さっさと消えてしまったど。そして家さ来てみて、
「みち子、どこさ置いだ」
「何や、おかちゃ、おれ、そんなこと、荷物なて知しゃねぜ」
 て、こう言うたど。
「何だや、あそこまで迎えにきたでないか、橋のところまで」
「迎えなて行かねぜ」
「隣の、かずえも来たし、裏のちえ子も来たでないか」
 て、そう言うたど。
「んでは、狐にだまさっではぁ、せっかく買って来たもの、みな盗(と)らっだなであったなぁ」
 て、人たちはそういう風に話したど。そしてその盗った狐だちは、山さ行って、分けっこしたど。そうすっどこんど、狐は悪かしこいもんだから、分けかたの親方になったど。そして、
「かわうそ、かわうそ。お前は年中魚食ってるども、塩気ないど、うまくないべがら、お前は塩の方ええでないか」
 て、そういうて塩呉っだど。狸は、
「お前はめったに、おれのような、足も早くないもんだから、穴の中に余計にいるべから、お前はローソクにしたらええでないか」
 て、ローソク呉っだど。そしてあと、自分がええものはぁ、みな取ってしまったど。そうして、かわうそは喜んで、もらった塩、魚につけて食うべと思って、川にもぐったど。そしたらみんな溶けてしまって、はぁ、魚見つけるまでに無くなってしまったど。こんど狸は穴さ行って、
「今夜こそ、明るくして寝んべ」
 て思って火つけたど。そしたら自分の毛さまで点いて、火傷(やけど)してしまったど。狐ばっかりええことしたど。それほど狐ざぁ、悪がしこいもんだど。むかしとーびん。
「集成 7A 狸と兎と川獺」
>>川崎みさをさんの昔話 目次へ