11 誰だ屁

 冬になっど、俵編み、農家ではやったもんだ。そうすっど隣のじじは、俵編み にたのんで来たど。
 ところがその人の屁は面白い屁で、「誰じゃ」ていうど、「プッ」とたれる屁だっ たど。そこからそこの家の若衆だは、
「あそこの家の餅盗んで、焙って食うべ」
 て戸の口さ行ってみたところが、
「誰じゃ、プッ」
 ていうから、誰かいたんでないかと思ったところが、そいつ知ってた奴が、
「あれは隣のじじの屁だから、かまうことない。あれに蓋さえもして呉れっじど、 じじはかまね」
 て、ダンボにからまった縄っぱしで蓋したら止まったど。そうすっどみんな連(せ)て 来て、
「こんど、じじの屁も出ねから」
 ていうて、「餅みな持って来て、焙って食うべ」というわけで、三四人で盗みに 行った。ところが、ダンボに蹴っつまった者がおったど。そしたら蓋がはずっで 止まってだ屁なもんだから、
「誰じゃ、ブッ、誰だ、ブッ」
 ていうもんだから、若い奴ら逃げて行ったど。屁だって溜めておくど駄目にな るもんだ。
(嵐田勝見)
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